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一通り食べて、使えそうなものをメモしたら、隊長さん達が試食する時間になった。
いつの間にかルドさんが生姜焼きモドキを作っている。
そういえば、夕食どきなのに、料理長がここに居て良かったのかな。
たまに干物をいくつか持って隣の厨房に顔を出してたり、長老さん達の干物の話を熱心にメモしてたけど。
干物を知るのが最優先だったとか?
ありそうだよね。守備隊じゃあ、日々新鮮な食材を使ってるから。
北の守備隊のほとんどの調理師さん達だって、干物は扱いをあまり知らないだろうし。
この試食で、ルドさんに何か閃くものがあったなら嬉しいけど。
そんなことを思いながら、試食の準備のお手伝いしてたら、隊長さん達がやって来た。
まずは、フェラリーデさんとリリィさんの治療部隊から。
「煮魚、では無いですね。甘い香りだ。」
「香ばしくて、すごくお腹に訴えて来ます。楽しみです。」
甘い香りに喜ぶフェラリーデさんに、生姜焼きの香ばしさにウットリしてるリリィさん。
美形な2人がウットリ微笑まれると、それだけで見惚れるほどに輝きが増す。グハッ。
久々にダメージ食らったなあ。
美形のトロける笑顔が心臓に悪いこと。
「さあさあ。よう来た。」
「ほれ、リギもな。」
「あったかいうちにお食べ。」
長老さん達の誘いに我に返ったフェラリーデさん達は、席につくと待ちきれない様子で、生姜焼きモドキを一口食べる。
そして、そのまま固まった。
「・・・何という。」
「ん〜〜!」
フェラリーデさんは呆然と涙を流し、リリィさんは頰に片手を当てて奇声をあげてる。
そんな大袈裟な。長老さん達だってここまでじゃなかったのに。
「まあ、仕方ないかのう。」
「煮魚とは違う強烈な味じゃしの。」
「わしらはアタルや長様の料理でいくらか耐性があるが、若いもんは無理じゃろなあ。」
ああ、お肉食べないから、濃い甘辛は経験が無いわけですね?
長老さん達はあー兄ちゃんやメルバさんが作ったのを食べたことあったみたいだ。
意外だなあ。
もしかして、あー兄ちゃん、すき焼きみたいなのとかも作ってたりして?気になるなあ。
それに、フェラリーデさん達でこれなら、このソース守備隊で出すようになったら、治療部隊の皆さんがものすごい騒ぎになりそうだ。
あ。ルドさんが「治療部隊は勤務後に食べるようにするか。」って呟いてる。同じこと考えてたみたい。