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 小魚の干物を一匹一匹裏返しながら、フライパンで焼いていく。

 まとめて菜箸で混ぜたいけれど、ここはぐっと我慢のしどころ。



 何せ、相手は干物だから、ちゃんと焼かないと硬いまま。

 最初は若干の生臭さがあったけど、そのうち香ばしい香りに変わり、焦げ目がついてくる。



 火が通ったら、お皿に移して置いておく。

 次はタレを作る。



 最初に少しのお水、お砂糖と醤油。

 お砂糖が泡立ってきたら、すぐさま、別にしておいた小魚を投入!



 フライパンを持ち上げつつ、手早く絡めて、くっつかない素材のバットに広げる。

 くっつかない素材のバットは、簡単に田作りを説明した時にルドさんが用意してくれたものだ。



 職場で使ってる、くっついたり、くっつかなかったりするホウキの素材を一部使用してるらしい。

 フライパンを置いて火を消したら、小魚を一匹一匹くっつかないように広げて、あとは冷ますだけ。



 手間がかかって面倒くさいけど、この手順でないとガチガチにくっついて取れないか、硬くてしゃぶるしかない田作りになる。

 特に、うちの実家の田作りは砂糖が多かったから、適当にやると、皿からも取れないなんてこともあったっけ。



 まあそれも、一番食べるからって、田作りを作るのを任されたあー兄ちゃんが、面倒がって失敗したからなんだけどね。

 その時は、電子レンジで温めてほぐしたけど、それに懲りたあー兄ちゃんが、くっつかない、パリパリの田作りの作り方を調べて、今の作り方に固定されたんだよねえ。



「祝いのための肴とはいえ、手間がかかるものじゃなあ。」



「魚人の里でも、ここまで小さいと、一匹一匹調理はせんじゃろう。」



「アタルのズボラもわかる気がするのう。」



 小魚を広げながら、失敗例として兄の話をしていると、長老さん達はなるほどと頷いていた。

 ルドさんは、皿から取れないことに驚いたらしく、砂糖が硬くなることについて興味を持ったようだった。



「このバットで大丈夫だろうか?」



 菜箸で動かしても、箸にくっつくけど、バットにはくっつかない。

 ちなみに、バットの名前の由来は、メルバさんの開発だから。



 この分なら大丈夫そうだ。

 ルドさんに、バットにはくっつかないし、乾けばお皿にもほとんどくっつかないことを伝えると、ホッとしていた。



 カラメルソースよりベタベタだもんね。

 心配するのもわかるなあ。



 長老さん達は、私とルドさんの話を聞いて、それなら、箸にもくっつかないように出来ないか、メルバさんに聞いてみようと、提案して下さった。

 くっつかない箸があれば、砂糖を多く使う料理が作りやすくなる。



 それは助かると、私は長老さん達にお願いすることにした。

 飴でベタベタになった箸は洗うのも大変だしね。

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