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 頼んでみたけど、結局膝からは下ろしてもらえず、タレに戦々恐々としながら、クルビスさんの試食を待つ。

 食欲をそそる香りにゴクリと目の前の喉がなる。



「いただきます。」



 クルビスさんが、タレがこぼれないように素早く生姜焼きもどきを口にする。

 口に入れた瞬間、目を見開いて固まってしまった。



 食べてみたら、甘かったので驚いたのかもしれない。

 大丈夫かなあ。甘いお肉には、話だけでも顔をしかめてたし。



「では、わしらも頂くとしようか。」



「うむ。感想は食べ終わってからじゃな。」



「いや。実に美味そうじゃな。」



 私の心配をよそに、長老さん達はクルビスさんが食べたのを見るや、いそいそと自分達の試食を開始する。

 ルドさんもこちらをチラチラと気にしつつも、試食を始めていた。



 クルビスさんはというと、口をモゴモゴ動かすようになったものの、吐き出す様子はない。

 魔素も動揺して少し乱れてるものの、否定的な感情は今のところ感じられないから、嫌いな味ではないみたいだけど。



「クルビスさん、大丈夫ですか?お水ありますよ?」



 口以外、彫像みたいに固まってしまった伴侶に水を勧める。

 初めて食べる味に驚いて喉を詰まらせたりしたら危ないと思ったからなんだけど、クルビスさんは首を横に振って断った。



 そこから、ようやくクルビスさんは口の中のものを飲み込み、さらに生姜焼きもどきを口に運ぶ。

 今度は飲み込むまでが早かった。



「クルビス坊や。リギも一緒に食べてごらん。」



「これはリギに合うぞい。」



「交互に食べても、一緒に口に運んでも美味しいんじゃ。」



 クルビスさんが動き出したのを見た長老さん達がご飯も一緒に食べるように勧めてくれる。

 今、クルビス坊やって呼んでたけど、珍しいなあ。

 


 こっちで成人を意味する個立ちの後は、長老さん達も様付けか役職を付けて呼んでるって聞いてたのに。

 でも、クルビスさんも気にした風もなくご飯に手を伸ばしてるし、長老さん達もニコニコしてるし、おじいちゃんと孫って感じだから、今はいいや。



 猛烈な勢いで食べ始めたクルビスさんに安心して、私も試食を開始する。

 一口で、懐かしい甘辛の味付けが口に広がり、生姜の香りが鼻を抜ける。



 甘辛さと豚肉の味が一体になってるそこに、ご飯のシンプルな味が加われば、もう止まらない。

 うーん。お酒欲しいなあ。これ。



 豚肉の味と言っても、魚の干物だから、サクサクと噛み締められて食べやすいのも良いと思う。

 うん。これなら、砂糖の量を調整すれば、小さい子でも食べられるかも。



 ルドさんをちらりと見ると、すでに食べ終わって件の干物を睨みつけていた。

 あ、これは、守備隊の新メニューに入る、かも?

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