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蟹味の干物を堪能したら、早速、生姜焼きのタレを作ることから始めることになった。
異世界の生姜は、長老さんたちがルドさんに説明して下さったので、すぐに材料は揃った。
異世界の生姜って紫なんだなあ。
紫の塊がいくつか並ぶと紫陽花みたいだ。
「パギョは魔素の量に比べて温まるし、香りが強いから、飲み物やスープに入れて使う。まさか、ソースになるなんて。」
ルドさんが説明しながら、不思議そうに生姜を眺めている。
異世界の生姜はパギョっていうらしい。
じゃあ、生姜焼きじゃなくて、パギョ焼きだ。
なんだか噛みそうな名前だなあと思いながら、フライパンを借りて、パギョ焼きのタレを作る。
醤油と砂糖は同量にして、すりおろした生姜を投入。
濃すぎる味は苦手なシーリード族のために水で少し薄める。
お酒欲しいなあ。
日本酒的なやつ。
そうすれば、みりん無くても良い感じに仕上がると思うんだよね。
メルバさん作って無いのかなあ。
そんなことをツラツラ思い浮かべてたら、生姜焼きのタレが出来た。
別のコンロでルドさんに炙ってもらった、豚肉味の干物を入れてもらって、絡めて完成。
「いい香りじゃあ。」
「うむうむ。コメに合うじゃろなあ。」
「長が悔しがるのう。」
「ざまあじゃな。仕事を溜め込むからじゃ。」
「魚人の里に行く前に終わらせておけば良かったのにのう。」
いつの間にか用意されてたご飯に、驚きつつも感謝して試食を始めることにする。
ざまあの辺りは聞かなかったことにしよう。
「待つんじゃ。」
「おお。ぴったりじゃの。」
「伝言を飛ばしたかいがあったわい。」
カッカッ
え。あ、クルビスさん。
お仕事はどうされたんですか?
「長老様たちに呼ばれたんだ。ハルカが料理を作るから、食べに来ないかと。」
いつの間に。
そう言えば、さっき伝言を飛ばしたって言ってたっけ。
「うむ。うむ。」
「まあ、とにかく食べようか。」
「お前さんが食べてくれんと、わしらも食べれんて。」
「ありがとうございます。」
長老さん達の気づかいに感謝して、クルビスさんも席に着く。
この気づかいは有り難いなあ。
味見とはいえ、蜜月の今の時期、私の作ったものを他のひと達に食べさせるのはマズいから。
一応、新しいレシピを作るから、一口二口食べるくらいの量でそういうことはあるかもと事前に了承はもらっていたけどね。
本当は先に食べてもらう方がクルビスさんのストレスにならなくて良いんだよね。
クルビスさん、見るからに上機嫌だもん。
でも、クルビスさん、膝に私を乗せるのはやめましょう?
生姜焼きのタレがかかったら流石に嫌です。