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「あのう。お食事時にすみません。北西の転移局の方々でしょうか?」
メニューを決めてメロウさんが厨房に下がった後、恐る恐るといった感じで声をかけられた。
声をかけてきたのはトカゲの一族の男性だった。
鮮やかなブルーの体色に額から後ろにかけて黒い細い線が入っている。
この辺のひとじゃないな。何の用だろう。
「何か御用でしょうか。」
カイザーさんがいささか突き放すように相手をする。
もしかして、他の転移局のひとだろうか。
引き抜きの話でもするのかな。
何もこんな時に来なくても。
「わたくし、南の転移局で術士をしています。トカゲの一族、デリアと申します。明後日から、臨時でお手伝いに伺うことになりました。お聞き及びでないでしょうか?」
「ああ。あなたが。私は転移局長のカイザーです。こちらが術士のキャサリンさんとハルカさん。おふたつとも、明後日から臨時で来て下さることになってる方です。雨季前に申請していたのが、今朝ようやく決まった次第で。これから10日間、南からお手伝いに来て下さいます。」
カイザーさんがデリアさんの紹介をしてくれる。
お手伝いの方かあ。確かに今日の様子だと、もうひとりくらい欲しかったところだ。
「ああ。あれ、通ったんですねぇ。いつも通り、無視されたと思ってましたぁ。あ、私、術士のキャサリンですぅ。よろしくお願いしますぅ。忙しい時期なので、数が増えるのは大歓迎ですぅ。」
「術士のハルカです。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。あの、急に声をかけてすみません。今日はこちらに来る用があって、せっかくなので転移局の方も尋ねたのですが、近づけなくて。」
申し訳なさそうにデリアさんが謝ってくれる。
あの騒ぎじゃねえ。近寄れなかったのも納得だ。
それも、昨日の今日だし仕方ないんだけど、このひとにはわからないことだ。
驚いただろうなあ。
「いいえ。驚かれたでしょう?お昼はもう食べられましたか?よろしければ、一緒にいかがですか?」
「ありがとうございます。ですが、今日は兄と一緒なものですから、これで失礼させて頂きます。ご挨拶出来て良かったです。それでは。」
お兄さんと一緒だったんだ。
あ。あのひと、クルビスさんとデートした時にイカの料理を持ってきてくれたお兄さんだ。
兄弟だったんだ。
世間は狭いなあ。