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フグスープは、後で隊長さん達にも食べてもらうことになった。
美味しく手軽に出来るし、上手くいけば、フグスープは守備隊のメニューに加わることになるらしい。やった。
残りも一通り食べてみると、魚人の里で教えてもらったいりこの代わりになる小魚も混じっていた。
これは、もう少し塩をきかせて干したものを、おやつにしてましたと答えたら、驚かれた。
甘くないから、出汁の元としか考えてなかったらしい。その理由に納得。
甘くて美味しい果物が食べられる土地で、わざわざ小魚をおやつにはしないだろう。
それに、食べてわかったけれど、最初の魚の山は、同じ種類で数が多かっただけだった。
ただ、干し方で見た目に差が出るらしく、味が濃いほど蛍光っぽさがないので、違う魚に見えたわけだ。
「本当は、一定に干せれば良いんじゃがの。」
「これが、中々難しい。」
「大半を海の底で作っておるから、品質は一定になってきたが、海藻ほどは品質が安定せんでの。まだ研究中じゃ。」
ああ、自然に干すなら、乾燥した涼しくて風通しの良い場所で干さないといけないよね。
あー兄ちゃんが、一時期、干物にはまってて、そんなことを言ってたっけ。
あの時は、どんな風に作るって言ってたっけなあ。
私は食べる専門だったからなあ。あんまりちゃんと聞いてなかったんだよ。
地上よりは海の底の方が涼しかったから、風通しさえ良ければ、後は美味しく出来ると思うんだけど。
海の底って、風なんて通るっけ?
「干物は涼しくて風通しの良い場所で作ると聞いたことがあるんですけど、海の底も風が通るんですか?」
私の疑問に長老さん達は、術式で、空気を循環させているらしいけど、風までは起こしていないと答えた。
空気の循環と言っても、室内に入れば風を感じるくらい大きく空気を動かしているそうで、それで干物作りの条件を満たしているらしい。
「もしかして、その循環する空気の通り道かどうかで、干物に差が出るのかも。」
思いついたことをポツリとこぼす。
魚の干物なら、海藻より水気も厚みもあるだろうから、同じようには干せないんじゃないかな?
「故郷では、こちらより涼しいし、風が通るので、干物は外で干すんです。だから、多分、常に風が通る方が上手く干せると思うんですけど。」
素人のうろ覚えの知識で良いのかわからないけれど、この世界は暑すぎるからか、干物は室内で作るから、条件が違ってくるだろう。
術式で一定の条件にするにしても、常に風が通るというのは、室内で出来るんだろうか。
「なるほど。風が常に通る、か。」
「海藻が循環で干せるからと、魚も同じようにはいかんわけじゃな。」
「ふむ。しかし、魚を吹き飛ばすわけにはいかんから、調整が必要じゃの。」
私のつぶやきを長老さん達は検討してくれることになった。
今年は無理でも、来年には試験的に作れるよう、一定の風を起こす術式を開発するぞと、意気込みがすごい。
うろ覚えの知識だけど、参考になったようでなにより。
干物が一定に出来れば、みりん干しも出来るかもしれないし、期待して待とう。