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異世界のみりんを味見することになって、ルドさんが手際よく小皿とスプーンを用意してくれる。
味見にはもちろんルドさんも参加だ。
「調理に使ってから味見したことはあるが、みりん自体を味見したことはないんだ。」
ルドさんもみりんの味見は初めてらしい。
まあ、単体で味わうものではないからね。
「ほっほっ。ルドが来ておった頃よりまろやかになっとるぞ。」
「うむうむ。里の調味料は年々進化しとるでな。」
「減塩タイプのショーユや辛みを足した油も作られとる。」
そんな話を聞きながら、少しだけスプーンにたらしたみりんを一口。
甘い。私の知ってるみりんより甘いなあ。でも、トロッとしてて、魔素は砂糖より少ない感じ。
成る程、ちょっと違うってこういうことかあ。
他に言ってた調味料も気になるなあ。
エルフの里には、和食の調味料だけがあるって思ってたけど、違うみたいだ。
自分でもエルフの里の調味料を調べてみた方がいいかも。
街中で手に入るもので出来るレシピもあるだろうし。
私が考えている向かいでは、ルドさんがすごい勢いで長老さん達の説明をメモに記録していた。
わあ。3人がバラバラに言ってることをきちんと書き留めてる。
名前や効能なんかも聞いてるし。
多分、次のお休みくらいにエルフの里に買付にいくんだろうなあ。
私の分もお願いしようかな?
「そんなに気になるなら、一式送ってやるわい。」
「よろしいのですか?」
「よいよい。ハルカちゃんも気になっとるようじゃしの。1つ分送るのも2つ分送るのも大差ない。」
私のも送って下さるんだ。
驚く私にコルトさんとデルカさんが頷き、ディランさんがルドさんを見て続ける。
「そうせんと、お前さん、納得するまで通い詰める気じゃろう?前もそうじゃったしの。」
苦笑する長老さん達に対して、ルドさんは嬉しそうに目を細めている。
うわあ。珍しい表情。
前もって、もしかして抹茶を味わったっていう時かな?
街の調理師さんでも知ってるひとはすごく少ないのに、ルドさんは知ってたし。
それだけ通い詰めてたってことだよね。
ルドさんの料理への情熱ってすごいなあ。
「ありがとうございます。」
「何。礼には及ばん。」
「うむうむ。送った調味料で、また美味いものを作ってくれればいいんじゃ。」
「いやあ。次に来るのが楽しみじゃのう。」
長老さん達、ルドさんに新しいメニュー要求してる。
ルドさんは慣れてるのか、笑って頷いてるけど。
でも、ルドさんなら、きっと新しい調味料でも上手く使ってくれるだろうなあ。
私はどうだろう。とにかく、知ってる味かどうか確かめる所から始めないといけないだろうな。