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長老さん達の件を了解して、ついでにどんな魚が来ているか聞いてみた。
残念ながら、フェラリーデさんは料理をしないらしく、魚の干物のことをほとんど知らなかった。
「すみません。どうにも私は調理に向いてないらしくて、故郷では厨房には入れてもらえなかったんです。ですので、今回何が来てるのかもわからなくて。」
何でも出来そうなフェラリーデさんにも、苦手なことがあったみたい。
そっかあ。じゃあ、片っ端から軽くあぶって、かじってみようかな?
もしかして、長老さん達が来てくれるのって、そういう部分の助言も含んでたりして。
ルドさんも知ってそうだけど、干物って、街では積極的に使わない食材だし、中には知らないものもあるかもだし。
「いいえ。それなら、ルドさんに聞いてみます。」
「それが確実だと思います。ルドは我が一族のレシピをよく知ってますから。もし、ルドでわからなかったら、長老達に聞けばわかると思いますので。」
「そうします。ありがとうございました。」
フェラリーデさんに検診とアドバイスのお礼を言って、厨房に向かうことにする。
その時、中にいたエルフの隊士さんたちからは、口々に応援された。
「ハルカ様、頑張って下さい。」
「是非、干物を広めて下さい。」
エルフって、干物好きなの?
驚きつつも、応援されて嬉しかったので、「頑張ります。」と答えて医務局を出る。
「お魚の干物って人気なんですね。」
クルビスさんに抱っこされながら、さっきのやり取りを思ってポツリとつぶやく。
それを聞いたクルビスさんは私のつぶやきにも丁寧に答えてくれた。
「街では、滅多に食べないからな。里では、冬眠期に結構食べるんだ。深緑の森の一族は血生臭い匂いが苦手で、肉はあまり好まないようだ。」
へええ。そういえば、和食は出るけど、メインはお魚ばかりだ。
冬の冬眠期に干物を食べるなら、メニューは増やしたいよね。
なんだかプレッシャーが増えたなあ。
私、魚の干物なんて、出汁に使うか、あぶるくらいしか食べ方知らないんだけど。
「大丈夫だ。ハルカが食べていた方法を紹介すれば良い。使い方次第だとわかれば、また、新しいレシピが出来るさ。」
魔素でなだめられて、緊張してた身体から力が抜ける。
そっか。あまり知られてないなら、こんな風に日常的に食べてましたって、紹介するのだけでもありだよね。
「干物って美味しいよ」ってわかってもらえたら、新しい使い方はプロが考えてくれるだろう。
うん。ちょっと考え過ぎてたかも。
「ありがとうございます。ちょっと難しく考え過ぎてました。」
感謝の魔素を贈りつつ、お礼を言うと、クルビスさんは目を細めて喜んだ。
気持ちも軽くなったところで、1階に到着した。
クルビスさんに抱っこから下ろしてもらって、食堂のカウンターに行く。
ルドさんの手が空いてたら、厨房へ直行だ。