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安心したらますますお腹が減って、クルビスさんに次々と口に運んでもらう。
私もお返しにと食べさせて、気がついたら大皿に山盛りだった果物も魚もなくなっていた。
「あっという間でしたね。」
もうちょっと食べたかったなあ。
でも、満足感があるから魔素は丁度いいはず。
「そうだな。でも、これくらいが丁度いい。」
「そうですね。」
もうちょっとって思うくらいが丁度いいもんね。
魔素も補給出来たみたいで、朝よりさらに身体が軽い。
「魔素も補給出来たみたいです。」
軽く肩を回しながら確認するようにつぶやく。
するとクルビスさんにマジマジと見られてしまった。
「魔素も完全に安定したみたいだな。もう抑えることが出来るんじゃないか?」
今なら出来るかも。
深呼吸して、よいしょっと。うん。出来た。
「早いな。さすが現役の術士だ。」
「ええ?そうですか?」
自分では自覚ないんだけどなあ。
まあ、最初の頃よりは意識しなくても出来るようになったとは思うけど。
「ああ。本当に魔素を抑えるのが上手くなったと思って。魔素を補給したからといって、すぐに身体に馴染ませられるわけじゃないから、しばらくは抑えられないこともよくあるんだ。」
魔素を身体に馴染ませるかあ。
それは早くなった自覚はある。
職場では、休憩で補給したらすぐ転移ってこと多かったからなあ。
繁盛期の時に、魔素を身体に馴染ませる感覚は鍛えられたと思う。
「職場では毎日のように、補給したら転移って感じでしたから、鍛えられましたねえ。」
苦笑しながら、思ったことをそのまま言うと、クルビスさんは「なるほど。」と感心していた。
自分ではわからないけど、上手くなってるなら嬉しいなあ。
術士の基本は魔素のコントロールだから。
一流の術士さんは息を吸うように魔素をコントロールできるそうだけど、そこまではまだ無理だなあ。
「これなら、リードに診てもらうことも出来るだろう。こっちに来てもらうつもりだったんだが。」
「診てもらう?」
どうやら、海の底から帰ってきたら、検診を受けないといけないらしい。
朝食で魔素がそこそこ安定しなかったら、きっと朝に見てもらってたんだろうなあ。
「リードの許可が出れば、魚も見に厨房に行ける。気になってるんだろう?」
許可が出れば干物を見に行ってもいいんですか?
うわあ。クルビスさんが離れる許可を出すなんて。
意外だなあ。嬉しい。
あ。いや。離れるのが嬉しいとか、そんなこと思ってませんよ?
「わかってる。大丈夫だ。ルドもハルカの意見を聞きたそうだったし、材料が揃ってるうちに見に行った方がいいと思ったんだ。名目は隊士の食糧にと差し入れてもらったものだから、食事のたびに使ってしまうからな。」
苦笑しながら、クルビスさんが頷いてくれる。
良かった。誤解させたいわけじゃないもんね。
でも、名目があったんだなあ。
普通に干物の新しいレシピのためとかだと思ったんだけど。
「レシピのためなんて言ったら、それを盗もうと怪しいやつらが寄ってくるだろう?」
ああ。そうだった。
ここではレシピ一つで一攫千金できるんだっけ。