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いろいろ考えてると、手をクルビスさんがトントンとたたく。
何?何かありました?
すると今度はカパリと開いた大きな口を指さす。
ああ。考えごとに没頭して、食べさせるの忘れてた。
「すみません。お出汁のこととか考えてしまって。はい。あーん。」
果物を差し出すと幸せそうに食べる伴侶。
ごめんね。お腹空いたでしょう?
皿にある料理をひょいひょいと口に運んでいく。
お皿と口を何往復かしたら、今度は私の口元に果物が。
「ハルカも。」
そういえば、私全然食べてなかった。
青い果物をパクリと食べる。
もぐもぐもぐ。
あ。これ、食感がバナナみたい。
香りもちょっと似てる。でも、バナナみたいな甘みはなくて、後口がさっぱりしている。
う~ん。地球の青いバナナを食べたらこんな感じかなあ。
まさか、本当に真っ青なバナナを食べることになるなんて思わなかったけど。
口の中、青くなってないよね?
そんなことを考えてる間に次ぎのひと口が。
今度はお魚だ。どれどれ。
美味しい!
鯛とかの白身の魚に近いけど、もっと脂がのってて味が濃い。
でも脂っこくない。
何これ。
普通、大きくなると味も大味になると思うんだけど、そんなことない。
魔素が凝縮されてるっていうのかな?噛めば噛むほど、魔素というか味が染み出てくる感じだ。
私が魚を気に入ったのがわかったのか、クルビスさんは目を細めている。
これ、美味しいですね。何て魚ですか?
「ジシカだ。普段は、海の底にいて、魔素をふんだんに蓄えている。渦が収まると、産卵のために上に上ってくるんだが、素早くて捕まえるのが難しい。たまたま大物が市場に出ていて、それを聞いたルドが手に入れてくれたそうだ。俺とハルカには、今日は魔素が必要だからと。」
ルドさんの気遣いがありがたい。
じゃあ、これ滅多に食べられない魚なんだ。
魔素も多いし、高そうだなあ。
もしかして、天然ものの鯛みたいに高級魚なんじゃあ。
「ルドさんのおかげですね。でも、これって、もしかしてすごく高価とか?」
ふたりで食べきっていいんだろうか。
守備隊の皆さんでわけないのかな?
「俺も魚の値段には詳しくないんだが、この大きさなら安くはないだろう。ただ、海の底から帰ってきた時は大量の魔素が必要になるから、食糧に補助金が出るんだ。今回は長さまが干物を大量に持ち込まれたから、補助金分が浮いて魔素が多い良い食材を仕入れてくれたらしい。」
補助金が降りるんだ。良かった。
魔素の補給のために買ってもらったなら、残さないようにありがたく頂こう。