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イラストも描き終わった所でクルビスさんがノックして入ってくる。
あれ。さっきお仕事に行ったばかりなのに。
「ハルカ。昼食を持って来た。」
え。うそ。もうお昼?
いくらお昼が11時くらいだからって、そんなに早く…あ、お腹鳴った。
「ずいぶん集中していたんだな。それじゃあ、魔素が足りないだろう?机を空けてもらってもいいだろうか?」
自分で自分に驚く私に、クルビスさんが苦笑しながら料理の乗った大きなお皿を置きたいとジェスチャーで示す。今日は大皿から取り分けるタイプの食事だ。
あ。いけない。ずいぶん散らかしちゃった。取りあえずまとめてっと。
「すみません。そんなに時間が経ってたなんて思わなくて。ご飯ありがとうございます。あ。ここどうぞ。」
「ありがとう。レシピは順調なのか?」
「ええ。スイートポテトはこちらでも何度か作っていますから、書きやすいです。」
クルビスさんからフォークや取り皿などを受け取って並べつつ、進捗状況を伝える。
後で、時間がある時に文章の添削をお願いしたいと言ったら、喜んで引き受けてくれた。
時間が取れるのか心配したけど、何かを察したクルビスさんが「ハルカのためになるなら疲れなどなくなる。」と甘い声で目を細めた。
余裕のありそうな態度に、大丈夫そうだと安心しつつ、甘やかそうとする旦那様に照れてしまう。
ドラゴンの一族は伴侶に頼られるのがとても嬉しいらしく、ドラゴンの血の濃いクルビスさんも同じらしい。
最初はよくわからなかったけれど、メラさんやイシュリナさんが何気なく旦那様に頼って喜ばれてる姿を見て、それをお手本に実行するようになった。
これがクルビスさんにも喜ばれたので、ちょっとでも困った時は、まずは旦那さまにお願いするというのが私の中でのルールになった。
今回も嬉しそうに引き受けてくれた旦那様に感謝しつつ、まずは先にお礼のサービスをする。
「はい。クルビスさん。あーん。」
ひと口サイズの真っ青な果物をクルビスさんの口元に持って行く。
幸せそうに頬張る伴侶に、何だか私も甘い気持ちになりながら次々と食べ物を運んでいく。
「はい。お魚もどーぞ。」
今日のメニューは果物の大皿の盛り合わせに大きな魚の丸焼き、それに何故か汁粉がついていた。
お汁粉は魔素の回復のためだろうけど、味が合わなそう。
「ん。そうだ。魚で思い出した。さっき長さまから大量の海産物が届いたらしい。」
私が魔素優先のメニューに微妙な気分でいると、魚を飲み込んだクルビスさんが今思い出したという風に教えてくれた。
もう送って下さったんだ。そんなに食べたかったのかな。