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身体に上手く力が入らないものだから、クルビスさんに起こしてもらって、さらに背中から腕を回してもらう。
その状態でお椀とお箸を持つ手を支えられながら、お汁粉を一口。
すると、それだけで身体が少し軽くなった。
うわあ。魔素が流れ込んでくる感じがすごい。
お砂糖が薬として扱われてたのわかる気がするなあ。
即効性もあるし、粉状だから摂取する量も調整できるし。
この汁粉は隊士さん用のお砂糖多めバージョンだ。
そのおかげか、半分に減るころには身体を自力で起こすことが出来るようになっていた。
これなら、もう自分で食べられるから、クルビスさんにも食事してもらえる。
クルビスさん用の大きな汁粉の器は、ベッドサイドのテーブルに置かれたままだ。
「ありがとうございます。もう自分で食べられますから。」
「…もう少し。」
自力で食べられると伝えたのに、余計にギュっと抱き寄せられた。
逆に食べづらくなったんだけど。
ん~。まあ、いいか。部屋の中だし。
クルビスさんの隊服を見る限り、今日からお仕事に戻るみたいだし。
本来なら忙しい時期らしいから、ふたりっきりの食事の時間なんて、しばらく取れそうもないもんね。
口元に運ばれてくる果物を楽しみつつ、私も旦那様に甘えることにする。
「あれ、食べたいです。」
次、お汁粉。
酸味のある果物の後に、甘いお汁粉が美味しい。
果物とお汁粉って合わないイメージだったけど、この果物なら合うなあ。
ジュースはリンゴジュースだ。うん。どれも美味しかった。ご馳走様。
「もういいのか?」
はい。ご馳走様でした。
クルビスさんは食べないんですか?
「それが食べたい。」
目の前に差し出されるフォークと、もう一つの手で示される果物のお皿で、あーんをご所望だと気づく。
はいはい。これですね?
パクリとフォークに食いつく姿を見て、自分も慣れたなあとしみじみする。
その調子でひょいひょいと口に運ぶけど、クルビスさん用は果物の量も多いから一苦労だった。
お汁粉とジュースはさすがに自力で食べてもらって、あっと言う間に完食。
私が食べさせる方が時間がかかるんだけど、クルビスさんの満足気な顔に良しとする。
食器を重ねたら、ちょっと二人でベッドに腰掛けて寄り添って座る。
何を話すわけでもないんだけど、こんな時間がすごく幸せ。
でも、もうちょっとしたらお仕事の時間だ。
さて、嫌がるクルビスさんをどうやって部屋から出そうか。