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外に出ると、海の底なのに新鮮な空気に包まれた。
思わずフウと息を吐く。
「やはり中とは空気が違うな。」
クルビスさんも外の空気を大きく吸っていた。
わかるなあ。
やっぱり粉っぽい感じがあるのとないのとでは息のしやすさが違う。
この粉は肺に悪くないんだろうか。なんだか心配だ。
「身体に着いた粉は払えば大丈夫~。息して吸った粉も吸収されるから、これくらいなら身体には残らないよ~。安心して~。」
私の不安が魔素に出ていたのか、メルバさんが周りに呼びかけ始める。
お医者さまの言葉だからか、皆ホッとした様子だ。
「見学はここまでです。お付き合い頂きありがとうございました。」
デランさんの言葉に皆が胸に手をあて、感謝を示す。
それに対して、デランさんもまた感謝の魔素を返してくれた。
「また、お越しください。我が里は地上の皆さまを歓迎いたします。」
その言葉を聞いた時、隣のクルビスさんが固まったのがわかった。
きっと、これまでだったらありえないことだったんだろう。
周りも驚きに目を見開いてるから、想像もしてなかったんだろうな。
メルバさんだけはにこにことご機嫌な笑顔だけど。
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不思議に思うことが多かったけれど、挨拶が終わると最初に通された会場に移動し、別れの食事会になった。
おやつの時間帯だからか、干し果物や干し魚などの乾物にお砂糖をまぶしたものなんかも出て来た。
おやつ煮干しのような小魚にお砂糖は合わないんじゃないかなあ。
でも、せっかく出してもらったんだし、土産話に一つ。
パキッカリコリ
アーモンドみたいな味。
お砂糖でコーティングしたアーモンドのお菓子に煮てる。
お魚なのに、木の実の味がするなんて。
不思議だなあ。もうひとつ。コリコリ。
「…香ばしい。」
あ。クルビスさんも食べたんですね。
美味しいですよね。これ。
「ピクサの干物に砂糖と合わせると、不思議と香ばしさが増すのです。砂糖を多く使うため、魔素の多い個立ちでなければ食せませんが。」
そうだよねえ。
これだけお砂糖を使ってたら、小さい子なんかは食べられないだろう。
個立ちでも魔素酔いを起こしやすい淡い体色の方は無理だろうな。
今回は隊士さん達相手だから出せたんだろう。
それにしても美味しい。この小魚。
他の料理とかにも使えないかなあ。