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「海の輝石は粉にするのは難しいのですが、昔、偶然に粉になる方法を発見しまして。最初は不良品かと長さまに相談したのですが、綺麗な粉になるので、何かに使えるかもしれないと研究を始めたのです。」
その過程で見つかったのが異世界のシャンプーだったと。
詳しく聞くと、最初は薬に使おうとしたみたいだった。
「僕らが前に住んでた世界ではね~。貝から採れるものは薬に出来たから、同じように出来ないかなって思ったんだよね~。」
「色々なものと混ぜたりしていたのですが、たまたま、追加の粉を持ってきた者が掃除中のものとぶつかりまして。」
「そしたら、持ってた洗剤に入っちゃって~。」
「使ってみると、効果が倍になったのは驚きましたな。」
「ね~。」
そこから、薬でなく、洗剤や化粧品といった別の方向での研究が始まったのだそうだ。
今ではシャンプー以外にもいろいろなものに使われているのだとか。
メルバさんの補足も入って、当時の研究が本当に偶然が重なって実ったものだと知る。
そこでハッとしたけど、これって、聞いちゃっていいんだろうか。
周りも硬直してるけど。
あ、フェラリーデさんはいつもの笑顔だ。魔素も動じてない。
あれ。クルビスさんも普通だ。
なら、この話を聞いたくらいじゃ真似は出来ないってことなのかな。
周りもそう思ったのか固まった空気がほぐれていく。
どうも、今回の視察は、今まで見せてもらえなかった場所や聞けなかったことが、ポンポン出てくるから心臓に悪い。
事前に学習したシーマームの特徴として、慎重で用心深いってあったんだけど、それも違うみたい。
ずいぶんと歓迎されてるし、いろいろオープンにしてもらってる。
クルビスさんは私のおかげだって言ってたけど、それだけじゃないよね。
帰ったら、イシュリナさんに話して、前の訪問の時と違う点とか教えてもらおう。
これはちゃんと知ってた方がいいことだと思うし。
聞けそうなら、ルシェリードさんにも詳しく聞いてみよう。
「ハルカ。髪が光っている。」
「え。あ、真珠パウダーで…。ふふ。クルビスさんもキラキラしてる。」
周りに散ってる真珠の細かい粉が髪やドレスについてキラキラと輝いている。
クルビスさんの服や鱗にもついてしまって、黒い鱗がきらめいて見える。
「おや、ではそろそろ出ましょうか。身体が光るようになったら、一度、外に出た方が良いのです。」
「そうだね~。ここらで、外の空気吸った方がいいかな~。」
デランさんとメルバさんが皆を外に誘導し始める。
細かい粉だし、いくら真珠とはいえ、吸い過ぎは身体に悪そうだし、外に出るのは賛成だ。