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「貴重な布なんですね。知りませんでした。知り合いの深緑の森の方がお祝いで作って下さったんですけど、あらためてお礼を言わないと。」
「あの、よければ、私たちからのお礼も伝えてもらえませんか?これを地上に出すようになったのは最近のことで、あまり広まってなかったんですけど、ハルカ様がそのドレスを着てから、注文が殺到したそうで。私たちは地上には出れない一族ですが、海の中から感謝していますとお伝えください。」
私が感動しつつ思ったことを口にすると、機織りの女性がおずおずと申し出る。
こんな所でも経済効果が。それに地上に出れないシーマームさん達もいるんだなあ。
いろんなことに驚きつつも、嬉しそうな女性達の様子に伝言を伝えることを約束する。
白の海の輝石も、結婚式以来人気があるみたいだし、知られていなかった良いものが広まるのは嬉しいことだ。
私たちの会話を聞いてか、視界の端っこでどこでこの布が手に入るのか交渉が始まっていた。
クルビスさん。私は大丈夫ですから。
トモミさんのこのドレスで十分ですから。
え?販売促進のため?う~ん。それじゃあ仕方ないですね。
ん~。じゃあ、トモミさんに追加でドレスを作ってもらいましょうか。
だから、布だけの購入で。
え?深緑の森の一族経由で卸してるから、手数料なしで運んでくれるって?
いやいやそんな。さすがに申し訳なさすぎる。
「お気になさらず。うちの特産をここまで広めて下さったんですから。それに餡子も教えて頂きましたし。」
皆さん頷いてるけど、いいの?
…いいみたい。餡子のとこでものすごく頷いてるひとがいるから、昨日のお土産を食べてくれたんだろうな。
まあ、もちろんさらに宣伝して欲しいっていうのもあると思うけど。
でも、それよりも、好意的な感謝を含む魔素が周りに満ちている。
じゃあ、ここまで言って下さってるんだし、お受けしようかな。
私が頷くと、喜々として交渉を始めるクルビスさん。
ほどほどにして下さいね~。
一反って聞こえたけど、そこまでいりませんから~。
フェラリーデさ~ん。止めて下さい。
笑顔で無理ですって返された。
他の伴侶がいる方たちも購入の話をしてるし、伴侶がいないひとも家族にと珍しい布に興味深々だ。
なんだか、昨日に引き続き、お土産ツアーになってるような。
視察じゃなかったっけ?
まあ、皆さん嬉しそうだからいいのかな。
周りも止めないし。
むしろメルバさんは見守ってる感じ?