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予想以上の早い引き抜きの動きに戸惑いつつ、何とか午前中の業務は終えた。
大量の荷物を捌いてたら、いつの間にか、というやつだ。
「ふぅ。終わりましたぁ。ハルカさん、そっちはどうですかぁ?」
「こちらも今終わりました。…すごい数でしたねぇ。」
「ホントですぅ。」
ふたりで疲れた顔でため息をつく。
ホンっと大変だった。
荷物が軽く昨日の倍とか何それ?
これが私の顔を見に来る口実で増えたんだったら、本当に申し訳ない。
「でも、これが続けば、今までの赤字分も解消ですぅ!今年の夏はボーナス期待できますねぇ!」
キャサリンさんがウキウキと教えてくれる。
赤字?え、ここってそんなに収益悪かったの?
「あ。ハルカさんは知りませんよねぇ。私ひとつで対応するようになって、それまで通りには出来なくなったっていうのは、お話したでしょうぅ?それで、皆さん、時間帯をずらしたり、魔素を使う遠くへの荷物や急ぎの荷物なんかはぁ、広場の方まで持っていってくれてたんですよぉ。でも、値段のかかる「急ぎ」が無くなったので、売上が落ちてたんですよねぇ。だから、このままだと成績不良店として、ボーナスが支給されなくなる所だったんですぅ。」
お急ぎ便ってやつですか。
たしかに、値段の高い遠くへの荷物や急ぎの荷物が無くなったら、売上は落ちるだろう。
でも、私が入らなきゃ、術士ひとりっきりだったわけだし、それも仕方ないことのように思う。
それとも、これも差別のひとつなんだろうか。公平な判断も出来ないってこと?
「でも、昨日の一件で、ハルカさんが勤め始めたことも広まったみたいで、急ぎや遠方の荷物も戻ってきましたしぃ、売り上げは戻ると思いますぅ。ついでに、ハルカさんと話そうと来るお客さんも来ますしねぇ。」
あ。私がいるから、荷物が戻って来たんだ。
まあ、通常通りに営業出来るようになったんなら、近い所の方がいいよね。
私と話したいっていうのは、有名人と話してみたいのと同じものだろう。
一時的なものだろうけど、それで売り上げに貢献してくれるなら笑顔で対応しよう。
「そうだったんですね。じゃあ、しばらくはこの状態が続きそうですね。」
「あうぅ。嬉しいですけどぉ。ちょっと疲れますよねぇ。」
キャサリンさんのため息におもわず笑ってしまった。
その笑いが乾いてたのは仕方ないと思う。