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お互い反省して、新しい約束をしたと思ったら、目の前が真っ暗に。
抱きしめられると真っ暗になるのにも慣れたなあ。
「ありがとう。ハルカが伴侶で良かった。」
そんな大げさな。
夫婦のちょっとしたすれ違いを直す提案をしただけですよ?
「俺の仕事を知って、俺に合わせてくれている。」
旦那様がものすごく忙しいんだから、そこは奥さんが合わせるところだと思うんだけど。
何だか違うみたい。
「中々難しいことだ、お互い違う仕事を持つと猶更。隊長格はその忙しさで伴侶と疎遠になる場合がある。特にこの前のように大きな捕り物がある場合は家に帰れないからな。」
ああ。それはわかるかも。
私の場合は別件で関わっちゃったから教えてもらえたけど、相手が普通のひとだった場合、事件に関することを聞くことはまずないはずだ。
いくら魔素の相性が良いもの同士が夫婦になっても、すれ違ったままでいたら上手くいかないだろう。
しかも旦那様が仕事とはいえ家に帰ってこないとか。
うわあ。それって、守備隊を出たら私が味わうことじゃない。
それは寂しい。それくらいなら、守備隊で生活させてもらった方がマシだ。
「家が見つかったら、そうなるんですよね?」
「ああ。ハルカの場合は、レシピのことがあるから、状況が落ち着いたとしてもひとつでは危ないだろう。母か祖母と一緒にいてもらうことになると思うが…。」
あ。そうだった。
忘れがちだけど、私の料理教室ってものすごい関心集めてるんだった。
たとえ、知ってるレシピを全部公開したとしても、まだ知ってるだろうと思われて狙われるのは目に見えてる。
うう。あこがれの街をひとりで散策とかはもう無理そうだなあ。残念。
でも、メラさんやイシュリナさんが一緒にいてくれるなら、さらわれることはなさそう。
ひとりでクルビスさんを待つより、その方が私も寂しくないし。クルビスさんも仕事に打ち込めるし。
「それなら、安心ですね。ひとつきりは怖いですし。」
ふふ、と笑いながらクルビスさんを抱きしめ返す。
私の答えに安心したのか、ホッとした感じの魔素が返ってきた。
「本当は、ずっとこうしていられれば、一番安心なんだが…。」
ため息のような独り言が聞こえたと思ったら。
今度は柔らかい魔素が全身を包んでくる。
うわあ。クルビスさん口説きモードだ。
慣れたつもりでもやっぱりどきどきする。
「…ハルカ?」
ひう。み、耳元でささやくのは禁止ですってば。
う。足の力が抜けそう。
自然と潤んでくる目で見上げると、嬉しそうに目を細めたクルビスさんがいる。
結婚しても口説かれるなんて思ってなかったのに。