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 案内してもらったのは、最初に連れていかれた建物の上の階だった。

 あそこは迎賓館のような場所らしくて、地上から交易に来る種族のために作られた建物なのだそうだ。



 私たちは最上階。

 2つしか部屋がなくて、私とクルビスさん、メルバさんが使うことになっている。



 泊まったことがないからわからないけど、ホテルのスイートルームより広いんじゃないかなあ。

 部屋も幾つかあって、その中には衣装をしまう専用の部屋まであるし。



 そして、さらに贅沢なことに、木製のベッドが置かれている。

 ルシェモモでも木製の家具なんて滅多に見ないのに。



 お客様用っていうのがわかるなあ。

 ベッドボードの部分には百合の花が2つ、対で掘り込まれていた。



 横にあるナイトテーブルにもお揃いの百合が模様として入っている。

 他にも良く見て見ると、リビングにあたる真ん中の部屋にある木製のテーブルやイスにも百合の模様があった。



 深緑の森の一族に揃いで注文したんだろうなあ。

 うわあ。高そう。傷とかつけないように気をつけよう。



 私が豪華過ぎる部屋にビクついていると、さっさと着替えたクルビスさんが出てくる。

 何だかいつもの隊服が安心しちゃう。



「ハルカ。どうしたんだ?」



「あ。お揃いの家具が珍しくて。」



 そんな会話をしてるとノックの音が響く。

 いつもの隊服に着替えたアニスさんだった。



 ひとりじゃこのドレスは脱ぎ着出来ないので、アニスさんが手伝いに来てくれることになっていた。

 早速、衣裳部屋に行ってベールを外すと、ムッと海の香りと湿度が鼻につく。



「あれ?」



「どうかされましたか?」



「いえ。ベールを外したら、急に海の香りが強くなって…。」



 何でだろう。

 食事の時も外してたけど、その時は何ともなかったのに。



「ああ。長様が術式を追加されてましたもんね。顔を覆ってるわけでもないのに匂いまで抑えるなんて、効果が強いんですねえ。」



 メルバさんったら、いつの間に。

 驚いて詳しく聞いてみると、メルバさんは、ルシェモモの暑さにかなりバテてた私を見て、心配になったそうだ。



 海の底だけあって、四六時中海の香りと魔素に包まれるし、湿度も違う。太陽の光も地上程は届かない。

 だから、魚人の里にこのままいかせると、慣れない海の魔素に弱いヒト族の私がまた体調を崩すかも知れないと思ったらしい。



 そこで、湿度と海の魔素の影響を抑える術式をベールに追加して縫いこんでくれたのだとか。

 言われて見ると、元からあった銀と金のラインの上に、さらに金の刺繍のラインが追加されている。



 全然気づかなかった。細いライン上にしか見えないからか、パッと見違和感がない。

 すごく細かくてよくみないと文字だとわからないくらいの刺繍なんだけど、こんなに大変な作業をまたして下さってたなんて。



 メルバさんも言ってくれれば良かったのに。

 アニスさんも私がメルバさんから聞いてるものだと思ってたらしく、私が驚いてる様子にさらに驚いていた。

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