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ゼリーの試食が終わると、後は他の加工現場を見せてもらう。
最初の2つ程ではなかったものの、それでも異世界の海の幸には驚かされた。
その中でも気になったのがお出汁の元になる海藻や小魚。
昆布やいりこの代わりになってる海藻や小魚は目に痛い蛍光グリーンとパープルだった。
どうやら良い出汁が取れる種類は蛍光の目に痛い感じが強くなるらしい。
見せてもらった海藻も小魚も直視しづらいくらいの輝きだった。
乾燥した後のも見せてもらったけど、乾燥したら蛍光っぽさは消えていて、黒っぽくなっていた。
謎だ。どういう仕組みになってるんだろう。
これは深緑の森の一族専用に開発したものらしく、地上には和食用に卸されているらしい。
北地区でも、守備隊近くにあるエルフの里の品物を扱ってるお店でも買うことが出来るらしいので、出歩けるようになったら是非買いに行ってみたい。
メジャーな食品ではないからか、隊士さんの中には干す時に魔素が飛ぶはずなのに色が濃くなるなんて、と困惑しているひともいたけど、逆に素材の加工そのものに興味を持った隊士さんもいたみたいだった。
魚人の里は食品の加工に関してはルシェモモの街よりずいぶん進んでいるようだから、良い刺激になってるみたい。
ルシェモモの街と一緒に発展したなら、本当ならもっと交流が盛んで、隊士さん達もどういうものを加工してるのかとか、どういう加工技術があるかとか、聞いたことくらいあっても良さそうなのに、初めて知りましたって顔をされてる方が多い。
さっきからしゃべってるのはデランさんだけで、他の作業をしてるひと達はこちらを気にしながらも無言で作業している感じだし。
敵意や怯えのような感じはないけど、歓迎って感じでもなさそう。単に気になるのかなあ。
あ、目が合った。こんにちわ。にこっと笑って会釈しておく。
お仕事の邪魔してごめんなさい。
でも、見せて下さってありがとう。
魚人の里とルシェモモの事情はまだよく知らないけど、とりあえずは仕事中にお邪魔させてもらったことに感謝しよう。
それなら大丈夫そうだし。
笑顔で会釈は誰かと目が合うたびに繰り返してるけど、クルビスさんもわかってるからか、手を繋いでるからか今は特に何も言わない。
たまに笑いかけないとマズいんだけどね。
そこは新婚らしくぐっと腕を組んで密着度を上げて微笑みかけてるから、不機嫌になったり周りを威嚇することもなく済んでいる。
うう。でも、式の本番より気疲れするかも。これ。