1
「これ、お願いします!」
「次、これね!」
「抜け駆けしないでよ!」
「おめえがチンタラしてっからだろ!」
「あ、あの、皆さん落ち着いて…。」
カウンターの奥で顔を引きつらせながら、対応する。
転移局で2日目になって、カウンターの前は昨日荷物の手続きにこれなかったお客さんと、荷物を受け取りに来たお客さんでごった返していた。
午前中は仕事関係のひとだけだろうって聞いてたけど、それでもすごい数だ。
さっきから、捌いても捌いてもまったく減らない。
ていうか、増えてない?
「こっちだ!」とか「ホントにいるのか?」とか聞こえてくるんだけど。
「ハルカさ~ん。そろそろ、こっち手伝って下さぁい。もう、奥は荷物で一杯ですぅ。」
「行って下さい。大丈夫ですから。」
キャサリンさんの助けを求める声に、カイザーさんがOKを出す。
それに頷いて、そそくさとカウンターを離れて奥に行くと、後ろから文句が聞こえてくる。何なの?
「お待たせしました。どれから送りましょうか?」
「あ。その緑のから左に置いてあるの全部ですぅ。まったく、普段来ないくせに、南側のひと達まで押しかけてぇ。よりによって今日にぃ。」
私に指示を出した後、ぶつぶつと文句を言うキャサリンさん。
南側?そういえば、今日のお客さんには体色が濃いわけじゃないけど、模様のあるひとがチラホラ混じっていた。
ということは、守備隊を挟んで少し南に寄った地区のひと達なんだろう。
北西の転移局のある地域のひと達には模様なんてないから。
もっと南にだって転移局はあるし、広場に近いあの地区の住民ならわざわざここに来る必要はない。
何が目的で来たんだろう?
正直、私も勤め始めたばかりだから、仕事が増えるのはありがたくない。
カバズさんの事がそんなに広まってしまったんだろうか?
魔素を注ぎながら首を傾げる。
同じく転移陣に魔素を満たしていたキャサリンさんが声をかけてきた。
「ハルカさん目当てですよぉ。いくつか知ってる顔の術士もいましたしぃ。偵察ってやつですねぇ。ああいうのは最低限しか相手しなくていいですからねぇ?」
え。私目当て?
もしかして、昨日言ってた引き抜き?早っ。