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「これが海の木です。枝の先にあるのが海の輝石になります。」
海の木。それが異世界の珊瑚の名前かあ。
海の木になる海の輝石なんて、まるで童話の世界だ。
「海の木は場所や栄養、そして温度によって色が様々に変わりまして、それが海の輝石にも影響を与えています。しかし、まだまだ分からないことも多いのです。」
「デラン様、海の輝石は石ではなく、実なのですか?中には種があるのでしょうか?」
デランさんの説明にフェラリーデさんが質問をする。
地上では真珠は宝石の一種という扱いだったし、海の木になってるというのは衝撃の情報だ。
よく腐らないよねえ。何か加工の方法があるのかな?
周りが固唾をのんで見守るなか、デランさんは軽く答えた。
「種は無いんですよ。」
へ?種がない実?そんなのあるの?
周りも私も首を傾げる。
「不思議なのですが、成熟したものも未熟なものも、割っても中は均一で種らしきものが見つからないのです。しかし、たしかに海の木から海の輝石は出来る。ですので、他の植物と区別するため、海の輝石を実という呼び方はしておりません。」
「変わってるよね~。もしかして動物なのかな~って思ったんだけど、動かないしね~。」
「珊瑚ですもんね。」
珊瑚って、地球では一応動物になるんだよね。
でも、こっちのは違うよね?たぶん。
そういう所は異世界なんだなあ。
真珠は宝石になるのに、珊瑚自体は加工しないのかなあ。
「…ハルカ。海の木を知ってるのか?」
「え。」
あれ。周りの視線が痛い。
私何かマズいこと言った?
「ハルカちゃん。もしかして、故郷にも海の木みたいなのがあったの?」
あ。陸で生きる私が海の底の生き物を知ってたらおかしいのか。
あー兄ちゃんからの聞きかじりです、なんて言えないし。
う~ん、どう言おう。
海の輝石の部分は避けて説明しなきゃ。貝から出来るなんて言えないし。
「え。あ。はい。珊瑚って呼ばれてて、形が良く似てるので、たぶん仲間だと思うんですけど。本体が硬くて色も綺麗なので、故郷では加工して宝飾品にしたりします。」
異世界なんで~。
聞きかじりの知識なんで~。
この辺で許して下さい。
もうしゃべれない。
「じゃあ、海の木も加工したり出来るかな~。これは柔らかいから無理かな〜。」
「ふむ。海の木は数多くの種類がありますから、向いてるものも探せばこの辺りにあるかもしれませんな。」
メルバさんとデランさんが海の木の話に戻してくれる。
よし、ここは乗っておこう。
「そんなに種類があるんですか?」
「ええ。とてもたくさんあります。ただ、不思議なことに、海の輝石が採れるのはこの一つだけなんです。」
この種類一つだけから。
じゃあ、植物の種とは限らないよね。
海の輝石ってなんなんだろう。
なってる所を見ると実にしか見えないんだけど。