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中は最初に案内された施設と同じく、微妙に傾斜のある廊下がまっすぐ奥まであって、中の壁も真珠が使われているのか、パールの繊細なきらめきを放っていた。
これって表面だけなのかなあ。もし、壁材そのものに混ぜられてたらものすごく高価な壁だ。
不思議なことに、窓がないにも関わらず、中はほんのりと明るく涼しい。
何か仕掛けがあるんだろうなあ。でも、水を通す溝も見当たらないし、第一、海の底では真水は手に入らないだろう。
これもメルバさんの魔術なんだろうか。
そっと後ろを見てみると、隊士さん達も不思議そうにキョロキョロしている。
ということは、こっちの世界の術式ってわけじゃなさそう。
メルバさんって本当に術士として規格外なんだなあ。
いつもすごいなあって思っていたけど、前はなんとなくそう思ってただけで、転移局の術士をしてる今は、自分では到底できそうにないってことが良くわかるようになった。
ルシン君もいつかはこういうことが出来るようにならなきゃいけないのかなあ。
「世界の管理者」のお役目をお手伝いして、いずれは継ぐんだもんね。
メルバさんのお手伝いをしなきゃいけないんだし、もしかしたら、ルシン君にはこっそり教えるのかもしれない。
「さあ、こちらへ。ドアが狭いので、おひとつずつお入り下さい。」
デランさんが引き戸を開けて奥を示してくれる。
引き戸なんだ。メルバさんの設計っぽいなあ。
クルビスさん私、そしてメルバさん、後は隊士さんが順番にドアをくぐる。
少し広めの空間は曲線を描いて半円っぽい形だ。
半円の直線部分の真ん中にドアがあって、私たちは円周の丸い壁側に寄るよう言われる。
皆が部屋に入ると、デランさんは円周の壁の端に手をかざす。
「わあ!」
「これは…。」
「なんと美しい。」
壁が光ったかと思えば、透明になって外の景色が見える。
外は泡の外になるみたいで、小さなエビのようなものや五角形の魚みたいなものがふわふわと泳いでいる。
でも、一番目を引いたのは視界一面に広がるカラフルな葉っぱの無い木。
ううん。木に見えるけど、あれ、たぶん珊瑚だ。
珊瑚の枝先には、丸い小さな玉が所々ついている。
もしかして、あれが真珠?
えええ。真珠って貝から取れるんじゃないんだ。
異世界にはもう十分驚いたと思ってたのに、まだ驚くことがあった。
異世界の真珠って木の実だったんだ。
あ、でも珊瑚から取れるなら卵の方が近いのかな?