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いろいろ質問が飛んだけど、当のメルバさんは「強化した」でのらりくらりとかわして、具体的な答えは返ってこなかった。
あ。でもこっち見てウインクした。
きっと異世界の魔術なんだろうなあ。でも、内緒ってことだよね?
クルビスさんもわかってるみたい。頷いておこう。内緒にしときますよ。
「ははは。まあまあ、それくらいで。長さまの力が素晴らしく強いのは今に始まったことではありませんから。我々には到底理解が及びませんよ。こちらの施設を作って頂いたときも、ただただ驚くばかりでしたし。」
こっちの騒ぎが少し収まったタイミングで、シーマームのデランさんが声をかけてくれる。
その手が示すのはやっぱり斜めに突き出した建物で、少し変わってるのはその壁が光を反射してキラキラしていたことだ。
「こちらは海の輝石の飼育場です。壁も輝石を砕いたものを使っているのですよ。」
えええ。これ、真珠の粉で出来てるの?
贅沢すぎる。日本の真珠の産地でだってそんなことに使ってないよ。
「…よろしいのですか?」
私が驚きに固まっていると、クルビスさんが緊張した様子でデランさんに聞く。
周りも驚きに目を見開いてるし、もしかして、ここって部外者が入っちゃダメな場所なんじゃ。
「はい。海の輝石の価値をよくご存知のお客様にはご案内しているのです。もっとよく知って頂きたいと我々も思っておりましたので、この機会に皆さまにも是非見て頂きたいと。」
飛び出た目を輝かせながら、デランさんが頷く。
私が式で白の輝石を身につけたから、見せてくれるみたいだ。
本当はもっと早くに知って欲しかったけど、これまでは白の輝石は表に出てはこなかった。
それがようやく日の目を見るなら協力してもらえるってことなのかな?
メルバさんはにこにこして頷いてるけど、他の方たちはクルビスさんの方を伺ってる。
緊張の魔素が解けて、喜びを感じる魔素に変わると、クルビスさんは胸に手を当てて丁寧に礼をした。
「ありがとうございます。」
そのたった一言に、とてもたくさんの気持ちが籠っているように聞こえた。
気がつくと、周りのシーリード族の隊士さん達も同じように礼を取っている。
慌てて私も礼を取るけど、意味はわからない。
表面的なことしか習ってないけど、シーマームとシーリード族は仲は良かったはずだ。
でも、今日の料理で見えたのは、親交が深いのは深緑の森の一族の方だった。
私が知らないだけで、何か隔たりがあったのかもしれない。
後でクルビスさんに確認しておこう。
知らなければいけないことがまだあるってことだから。