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私がハモもどきを気に入った様子に気を良くしていたクルビスさんだけど、私が白身の魚を箸に取ろうとした時には少し固まってしまった。
う~ん。やっぱり抵抗あるのかなあ。
でも、シーマームとの交流を考えると、出来ればクルビスさんにも食べて欲しい。他の方には難しいだろうから。
クルビスさんは、イシュリナさんの故郷の料理で白いお餅も食べてるだろうし、シーリード族の中では白い食べ物に抵抗が無い方だと思うんだけどなあ。
培ってきた習慣や常識が邪魔するのかなあ。無理は良くないけど、出来ればひと口だけでも食べてみたいと思って欲しいんだけど。
あ。さっきのクルビスさんみたいに、今度は先に私が美味しそうに食べてみればいいかな?
パク。もぐもぐもぐ。
うん。美味しい。やっぱりわさび欲しいなあ。
そこが残念だけど、とりあえず醤油だけでも美味しいよね。ちょっとだけお刺身につけてっと。
ほら。クルビスさんとっても美味しいですよ~。ひと口だけ食べてみません?あ~ん。
パクリ
あ。食べた。
目を真ん丸に見開いて、それから口をもごもごさせてる。
今度は目をうっとり細めて、気に入ったみたい。
良かった。あ。もっと食べたそうに見てる。
はいはい。おかわりですね。
その前に、さっきのお魚、もうひと口私に下さい。順番ですよ。
そうやって、周りをそっちのけでふたりで食べさせ合っていると周りがまた騒がしくなったのに気づく。
どうやら、調味料や白身の魚に他の参加者も挑戦しようとしてるみたいだ。
「ふむ。この魚ですね。使ってらっしゃるのは…。あ、これ、深緑の森の一族のソースでは?」
「ええ。魚とよく合うので、こちらの里にも定期的に降ろしています。」
「それまでは塩や果汁で食べるだけでしたから、この里の料理もずいぶんと変わりました。」
「ん!これはなんと上品な甘みでしょう。とても美味しいです。」
「でしょう!これはギラという魚で、この時期しかこの辺りでは採れないのです。白い魚なので地上の皆さまにおすすめするのは迷ったのですが、深緑の森の長様に出した方が良いとご意見をいただきまして。」
「そうだよ~。美味しいでしょう?初めて食べた時にはビックリしたよ~。白いお魚なのに、魔素も多いし、美味しいし~。世界には知らないことがまだまだあるよね~。」
いろいろな話と一緒に驚きの魔素が背中に感じられる。
私はクルビスさんの方を見てるから確認出来なかったけど、クルビスさんが面白そうに笑ってたから皆おっかなびっくり食べて、その美味しさに驚いているんだろうな。
主賓の私たちが食べれば、シーマームの方たちに失礼にならないと思ったんだけど、他の隊士さん達も食べてくれるならその方がなお良いよね。
会場も最初よりずいぶん打ち解けた雰囲気になってきてるし、良い感じでスタートできたんじゃないかな。