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私のあ〜んに気を良くしたクルビスさんは、また私に食べさせようと大皿からお刺身を取っていく。
中にはネオングリーンのお刺身もあって、出発前にルドさんに用意してもらったカッペを思い出す。
同じ魚かなあ。また鰆のお刺身が食べられるなら、すごくラッキーだ。
ん?奥にあるお皿から取ったお刺身が何か変だ。魚の身に色の違う部分がある。
キラキラして綺麗なんだけど、スイカみたいに緑の部分と赤の部分が等間隔で並んでいる。
もしかして、ルドさんが言ってた模様のある魚?え。身にも模様があるの?
私が異世界の魚に改めて驚いている間に、クルビスさんは、デランさんに説明してもらいながら、ずらりと並んだ小瓶や壺をテキパキと小皿にとっていく。
私には何が何だかわからないけど、クルビスさんにはわかるみたいだ。任せよう。
でも、使うのに勇気がいるやつもある。赤黒い液体とかあるんですけど、血じゃないよね?
例のスイカ模様のお刺身はその赤黒い液体につけられた。
うわあ。お刺身がキラキラしてるのと滴り落ちる赤黒い液体のギャップがすごい。食べるのに、ちょっと勇気いるなあ。
私の躊躇に気づいたクルビスさんがまず自分がパクりと一口。
目を細めてる。気に入ったんだな。
クルビスさんの好みは和食のような繊細な味付けの料理だ。
コッテリよりアッサリを好む。
若いからお肉もたくさん食べるけど、どちらかというと魚の方が好きだ。
だから、お刺身を出すお店も知っていたし、一緒に食べに行く約束もしたくらいだ。
そのクルビスさんが気に入ったんなら、クセの少ない美味しいお刺身なんだろう。
クルビスさんが美味しそうに食べるから、食べてみたくなった。
私が食べたそうにしてるのに気づいたクルビスさんが、さっとスイカ模様のお刺身を口元に持ってくる。
パクり。もぐもぐもぐ。アッサリしてるなあ。でも噛んでると旨味というか、甘みがジワリと口に広がる。
あれ。この味知ってるなあ。これハモの湯引きの味じゃない?
驚いた。湯引きした身の味のお刺身だなんて。生臭さが全然無い。絶対もっとクセのある味だと思ってたのに。
赤黒い液体は少し酸味のある果汁みたいで、ハモもどきの繊細な甘さをより引き出してくれる。
ベリー系かなあ。梅肉より酸味は随分柔らかいけど、これはこれで合うと思う。
ホント、食べてみないとわからないことって多い。
あ、じゃあ、今度は私から白身のお刺身をクルビスさんにあ〜んしてみようか。驚くかな?