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「さあ、我が里の料理です。陸では目にしないものもあるでしょう。まずはご賞味ください。」
料理がすべて運ばれてくると、デランさんが食事の開始を告げる。
魔素の補給を第一とするこの世界では、食事が交流の第一歩。
シーリード族への挨拶は、各一族へのお披露目には必ず食事がついていたしね。
その分、各一族の長への挨拶は簡単にしていたけど。
ヘビの一族くらいかなあ。
族長への挨拶から一族のお披露目まで、大量の食事がついてきたのは。
まずはデランさんが見本を見せてくれる。
長い取り箸でお刺身を2、3枚器用に取り皿に取る。
それを今度はフォークで刺して、調味料を出したお皿につけて食べていた。
ちなみに。醤油さしに入っていたのは、エルフの里で見たお醤油でした。
うん。普通に刺身だ。
わさびはないのかなあ。ちょっとでいいからわさび欲しい。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、クルビスさんも私もお刺身をいただくことにした。
クルビスさんは青と赤と緑を、私は緑と黄色と白のお刺身を取る。
フォークでお刺身を刺すのは不思議な感じがしたけど、緑のやつは薄いのに硬い身もあって、昔一回だけ食べたアワビのお刺身を思い出した。
口に入れるとコリコリとした食感が心地よく響く。
昔はこのコリコリした食感に苦手意識を覚えたけれど、今はそれも楽しめる。
次は白。やっぱり白身のお魚だよね。
こっちにも白身のお魚っていたんだなあ。
ぱく。んんん。甘い!
口に含むとあっさりとした、でも上品な甘みが広がる。
でも、今まで食べたことのあるお刺身より、こっちの方が甘みがさらに強いような?
なんにしても、すごく上等なお刺身だ。これ。
こっち来てから食べ物は贅沢してばかりだったけど、これはまたさらに贅沢だよねえ。
幸せ~。白身のお刺身って最高。
まさか異世界でも白身のお刺身を食べられるなんて。
もしかして、これも異世界トリップしてきた魚だったりして?
お餅もあったんだし、ありえるよねえ。
白は嫌煙されるみたいだけど、トリップしてきた魚なら白でも魔素は豊富なんじゃないかな?
もうちょっと頂きたいなあ。美味しいこれ。
でも、先に取った黄色いお刺身から食べなきゃね。
えっと、もうちょっとお醤油…。
あ、クルビスさんそれ取って下さい。ありがとうございます。
塩や他の調味料も気になるけど、まずは醤油で試したいんですよね。
ん?何だか静かですね。
食事の時は交流するものなのに。
「気に入った?」
何ですか。クルビスさん。いきなり。
そんなの決まってるじゃないですか。
「ええ。大好きですよ。」