3
魚人の里へつながる転移陣は他のとは少し違うデザインだった。
真円の中に目的地を示す言葉が連なっているのは同じだけど、そこに渦を示すぐるぐる模様や魚の絵が追加されてて、何も知らなければ転移陣を真似た子供のお絵かきだと思ってしまいそうだ。
「さあ、第一陣送るよ~。」
仕事柄、もっとよく見て見たかったけど、転移陣が淡い金に光ったと思ったら、転移陣の刻んである部屋が洞窟のような場所に変わっていた。
もう転移したのかな。さすがメルバさん。
「ようこそ海の街へ。」
あまりに早い転移に驚いていると、入口らしき穴にシーマームの女性が立っていて、声をかけてくれる。
銀鼠色に輝く鱗に淡い桃色の衣装をゆったりと来て、上に羽織りのようなものを重ねていた。
目は淡いブルーでキラキラと濡れているように見える。
少し飛び出して見えるかな?ちょっと違和感を感じる。
耳の場所にはエラのようなヒレのような、手の平サイズの扇状のものがついている。
頭のてっぺんにも細長い髪の毛のようなものがついていて、そこには冠のような真珠の飾りをまきつけていた。
「さあ、次の方々が到着されますので、まずはこちらへ移動を。」
女性の声にハッとなり慌てて部屋を出ると、またすぐに転移陣が光って次の団体が到着する。
早すぎるでしょう。メルバさん。
「これは、こちらからも声をかけて移動してもらいましょう。長の転移が早すぎます。」
同じことを思ったらしいフェラリーデさんが提案して、クルビスさんと後で来た隊士さんたちに声をかけて、私たちのいる控室に移動してもらう。
転移陣の上に誰もいなくなったと思ったら、また光ってメルバさん含む3つめのグループが到着した。
「あれ?早かった~?」
早すぎます。きっと室内の全員がそう突っ込んでたと思う。
そう広くない控室は用意されてるイスに座る余裕はあるものの、窮屈に感じるくらいひとで埋まっていた。
出迎えてくれたシーマームの女性も慌てた様で、外に出て案内するのでついて来てほしいと言ってくれる。
すみません。お願いします。
「とりあえず、主賓から向かってもらおうか~。北の子たちから先に出発ね~。後は転移順で~。」
メルバさんの一声でクルビスさんと私、その後にフェラリーデさんとアニスさんと順番に続いていくことになった。
案内のシーマームの女性のワンピースの裾からはヒレのついた長い尻尾が見えている。
周りの洞窟のような壁といい、別世界に来たんだなあって感じる。
ちょっと緊張してきたかも。どんな所にいくんだろう。