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食後はネロの頭をなでて、つるつるした毛の下から鱗が出て来てるのを確かめたりしながら戯れた。
ネロの鱗はクルビスさんのより大きくて分厚いみたい。
爬虫類系らしく、触るとちょっと冷たいんだけどね。
でも、クルビスさんほどひんやりはしてないなあ。
鱗が分厚いからかな?
毛のつるつるした感触はそのまま鱗も同じで、光を反射してキラキラしていた。
この子が街を走るようになったら目立つだろうな。
クルビスさんの傍によくいるから真っ黒なまんまだし。
蓄えてる魔素も大きくて身体も大きくなれば、前に一度あったみたいに誘拐されそうになるなんてことも無くなるだろう。
「ハルカ。」
声が聞こえたと思ったら、なでてたネロがいない。
いつの間にかテーブル一つ分の距離を空けられていた。うう。寂しい。
「ハルカ。」
クルビスさんの声にちょっと力がこもってる。
すぐに返事しなかったからむくれてるのかな。しょうがないなあ。
「クルビスさん。お疲れ様です。お食事ですか?お先に頂いちゃいましたけど、良かったですか?」
何でも無い風に、なるべく刺激しないように。
ネロもそれがわかってたから、距離を置いたんだろう。賢い子。
「…ああ。すまない。夜もどうなるかわからないから、先に食べててくれないか?」
クルビスさんの方を向くと魔素が穏やかになったけど、疲れてるのが魔素にも顔にも出ている。
大丈夫かな。昨日も夜遅くに戻って来てたみたいだし。
数日とはいえ、シードさんに任せて街を離れるクルビスさんには、山のような仕事が舞い込んでいるらしい。
実は、数年に一度行われる武闘大会がもうすぐあるらしく、その調整でこんなことになってるみたい。
疲れた様子の伴侶を見ると、倒れないか心配だ。
そういうのって、いくらかシードさんに任せられないのかなあ?
「頑張ってくれるのはありがたいけどよ。クルビス。ほどほどにしろよ?折角の訪問で倒れちまうぜ?」
同じことを思ったシードさんが目を細めて忠告をする。
シードさんからみても、最近のクルビスさんは働き過ぎみたい。
「ああ。だが、出来るだけお前の自由が利くようにしておきたいんだ。訪問がこの時期までずれこんでしまったからな。」
「ん~。まあ、それは、そうだよなあ。この時期じゃなきゃなあ。…助かる。でも、無理すんなよ。」
「気を付ける。」
そういって、お互い、軽く握ったこぶしをコツンと当てて、いつの間にか食べ終わってたシードさんは席を立った。
お互いを想ってるって感じだなあ。ちょっと妬けちゃうかも。
それにしても、そんなに忙しい時期に隊長さんが抜けて大丈夫なのかな?
今さらだけど、何だか心配になってきた。