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そんな話をしていたら、お昼ごはんの時間になる。
クルビスさんは大忙しなので、今日はリリィさん達と一緒に食堂でご飯を食べる。
「今日はカッペだ。魚の切り身をソースに絡めてある。南で食べられる魚人のレシピだ。」
そう言ってルドさんに差し出されたプレートには魚の切り身がお花みたいに美しく盛りつけられていた。
これは私への特別メニュー。
魚を使ったレシピが豊富な魚人の里に行くことになって、私がまだ生のお刺身を食べてないから、念の為、事前に食べて体調の変化も見ておこうということになったからだ。
合わない魔素を持つ魚は事前に向こうに知らせてあるけれど、設備の充実したルシェモモの街にいる間に試しておいた方が私も安心できる。
生魚を食べること自体への抵抗はないから、異世界のお刺身が身体に合うかどうかを見るだけになっている。
ただ、色がね…。
ネオングリーンな魚の身が目に痛い。
しかもキラキラとうっすら紫っぽいソースがかかってるから、ハロウィンを連想させるような食欲を亡くす組み合わせだ。
驚いて固まった私を誤解したのか、ルドさんがそっと「ソースをからめてるから生でも食べやすいようになってる。」と教えてくれた。
いえいえ。ルドさんの料理がどれも美味しいのは知ってるので、刺身の文化もあるんで食べるのに抵抗があるとかじゃないんです。ちょっと驚いただけで。
「いえ。この魚の身は初めて見たなと思って。色が目に鮮やかですね。」
私の故郷の食べ物がこっちと色味がだいぶ違うと知ってるルドさんは、私が色に驚いたのがわかったようだった。
そして、「魚人の里ではもっと派手な赤と緑の魚や真っ青な魚もいるそうだ。味もこちらに出回るものより良いらしい。」と話を合わせてくれた。
「いろんな色の魚がいるんですねえ。」
そっかあ。模様つきの魚や真っ青なのもいるのかあ。
もしかして模様つきの魚とかだと中身も模様が入ってたりして。
ははは。それはないか。さすがに。
おバカなことを考えつつ、ルドさんにお礼を言って、リリィさんさんとテーブルに向かう。
さて、ハロウィンなお魚料理のお味はどんなのかな?
あ。鰆っぽい。