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「ええ。充分な情報です。…大体のお話しは聞けたと思うのですが、他に何か普段と変わったこととか話していらっしゃいましたか?」
「う~ん。さすがにもうないですねぇ。今日まで、お会いしたのも3回ですしぃ。」
キャサリンさんがネタ切れを示すようにため息をつく。
3回の会話でこれだけ知ってれば十分ですよ。お疲れ様です。
「私もですね。キャサリンさんと一緒にお話を聞いていた程度ですので。」
カイザーさんも申し訳なさそうに礼を取る。
いえいえ。事情を説明して下さった上に、話題に上った技術者さんを教えて下さったじゃないですか。
おふたりの話でただの詐欺ってだけじゃないのがわかっただけでも十分な収穫だろう。
それにカバズさんの性格もわかったしね。
頑固で意地っ張りな昔ながらの職人気質。
術式のせいで、今回はそれが悪い方に影響したけど、本来は真面目で優しいひとだと思う。
私が転移局で働く話になった時、キャサリンさんを気遣う様子は本物だった。
妹を心配するお兄さんみたいな感じだったけど、でもウソはなかった。
そんなひとが知らないうちに犯罪に巻き込まれて、あまつさえ死にかけるなんてあんまりだ。
何とかして元の平穏な生活に戻ってもらいたい。きっと、ここにいる皆が思っているだろう。
「そうですか。有益な情報ありがとうございました。後は、ルイさんとカバズさんに直接お聞きして、調査を進めていきます。詳細がわかったらまたお知らせしますね。その間、北西の転移局の皆さまには、ご近所の方にカバズさんのことは過労による魔素の暴発とお伝えいただけますか?どうやら、徹夜でもしていたようで、魔素にその形跡がみられるのです。」
「ええぇ。カバズさん、本当に疲れてたんですねぇ。」
「また、無理をなさったんですね…。」
フェラリーデさんが聞きとりの終了と私たちへのお願いを述べると、キャサリンさんとカイザーさんが呆れたようにため息をつく。
どうやら、カバズさんが無理をするのはいつものことらしい。
「じゃあ、それで話を広めて置きますねぇ。」
「そうだね~。ついでに、徹夜は魔素のバランスを崩すから、やめるようにって僕が言ってたっていうのも付け加えてくれる~?無理する子多いから~。」
「はい!お任せ下さいぃ。」
「長様からのお言葉なら、皆聞いてくれると思います。」
「出来る限りさせていただきます。」
メルバさんの追加に、大きく頷くキャサリンさん。
カイザーさんも控えめながらもしっかり頷いてくれ、私も協力を宣言した。