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「魚人をモデルにしたというドレスに、白の海の輝石。きっと喜ばれますよ。」
調整のための試着が終わって、着替えを手伝ってくれてるリリィさんがそう言って微笑む。
ぐふっ。久々にダメージが。キリっとした美人さんが柔らかく微笑むと破壊力が半端ないです。
「そ、そうだと嬉しいですね。あちらでは白はとてもいい色だそうですし。」
何とか答えたけど、内心はドキドキだ。
このギャップにシードさんもやられたのかなあ。
「白は海の色ですものね。」
アニスさんもリリィさんに頷きながら、白の輝石のネックレス、日本風に言うと真珠のネックレスを箱にしまってくれている。
魚人の里では海の色である白はとても格の高い色とされてるそうだけど、そういうことも今まであまり知られていなかったらしくて、同行するアニスさんも勉強してくれたんだよね。
講師は魚人の里と長年取り引きのあったグレゴリーさん。
私に白の輝石を勧めてくれたひとだ。
黄の一族の長のオルファさんの叔父さんで、先代の長の弟さん。
宝石やアクセサリーのお店を商っていて、白の輝石の価値を見い出しながら、世に出せず悩んでいたそうだ。
私が白の真珠を知ってることに驚いて、そしてお式のアクセサリーに選んだことをとても喜んでくれていた。
私の式で注目を浴びてからは、1粒から私のように長いネックレスにしたものまで、白の輝石を身につけたいと注文が来るようになったらしくて、感無量なんだと涙ぐんでたなあ。
「偉大な海の色、でしたか。本当に白は偉大な色です。お式の後から、白を活かすデザインが流行してますが、白を入れるだけでデザインの幅がとても広がって。尊ばれるのもよくわかります。」
ドレスの微調整に来てくれた針子のマルシェさんがしみじみとつぶやく。
今まで、オシャレに白を活かすって発想はなかったもんね。
私の結婚式でベールを白にするのだって、「故郷の風習」で押し通してやっとだったし。
でも、白って、一色でもいけるし、ちょっと指し色にするだけでも他の色とのバランスが取りやすかったりするから、とても自由度の高い色だと思うんだよね。
その分、センスが試されるわけだけど、かえってやる気がわくのか、ルシェモモのデザイナーさん達はどんどん斬新なデザインを生み出しているそうだ。
マルシェさんの所には若い女性のお客さんから白を使って欲しいという要望が増えたようで、若い世代にはどちらかというと好意的に見てもらえてるみたいだというのが私の印象。
今まで全く認められてなかった白が、私の結婚式でちょっとはいいんじゃないかって思ってもらえて、活用されるようになったんなんて嬉しいことだ。
白を尊ぶ魚人の里でどう評価されるんだろう。リリィさんの言う通り喜んでもらえたらいいなあ。