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「小さき子らを見ていたから、移動に時間がかかっているんだろうが、それにしても遅いな。ん。来たな。」
メルバさんの移動に時間がかかるなんて、何だか変な感じだ。
でも、もう来てくれたみたい。
「ルーシィちゃん!あ、皆いる。良かった~。魔素は収まったみたいだね~。」
慌てた様子で駆け込んで来たメルバさんだけど、私たちが落ち着いてお茶を飲んでる様子に気が抜けたようだった。
メルバさんは珍しく髪をふり乱して、汗もかいている。
「遅いぞ。メルバ。」
「ちょっと、ルー君!中からここまでどれだけ距離があると思ってんの~?大貝は転移出来ないんだから~。急ぐなら、誰か迎えに寄越してよ~。」
ここって転移出来ないんだ。
それで、広い建物を全力疾走かあ。うわあ。大変。
「あ。誰かに迎えにいかせれば良かったですね。」
「そういや、そうだな。メルバは同族の中では足が遅いんだった。悪かったな。」
「ううう。ドラゴンの基準で考えないでよ~。僕、ドラゴンの血は魔素と年齢にしか出てないんだから~。」
そう言えばというように、フィルドさんとルシェリードさんがつぶやき、メルバさんががっくりとうなだれる。
どうやら、メルバさんはドラゴンには同族として考えられてるみたい。
だから、対応もドラゴン用だったと。
ここに来るときのクルビスさんやフィルドさん並みに走ってくるだろうって思われてたんだ。それは無理だよね。
「はあ。ルーシィちゃん、それでお腹の子はどう?何かいつもと変わった様子は?」
諦めたのか、お医者さんモードのメルバさんがルーシィさんに質問を始める。
ルーシィさんはお腹に手をあてて、目を細める。
「特には、あ、でも見て頂いてもいいですか?私、さっきまで、魔素が抑えられなかったから、心配で。」
「じゃあ、確認しようか。あ、アル君、ちょっと横にズレてもらっていい?ありがとう。手は握っててあげてね。」
アルディアさんが横にズレて、ルーシィさんの正面にメルバさんがしゃがむ。
そして、メルバさんの周りが光ったと思ったら、何も無かったように立ち上がった。
「うん。母子ともに健康!後は産み月まで安静にしててね~。」
検診は問題なかったようで、口調がいつもの調子に戻っていた。
もう終わりなんだ。そういえば、黄の一族のオルファさんを見たときは、外用に派手に見せてるって言ってたっけ。
実際はこんなに地味なんだなあ。何があったかわかんなかったし。
でも、ルーシィさん達はホッとしたようで、何度もお礼を言っていた。
お腹のお子さんは何ともないみたいだし、一番心配してたことは解決したみたい。
でも、ルーシィさん、安静にって言われた時に魔素が揺れてたけど、大丈夫かなあ。