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ついでに餡子のお菓子を作る時に気になってることがないか聞いてみようとすると、クルビスさんとイシュリナさんが外を険しい顔で入口を見ていた。
何か来るのかな。何だか皮膚がピリピリするんだけど。さりげなくクルビスさんの背後にかばわれる形で座り直して、身構える。
「ハルカさん!クルビス!いるかい!?」
え。フィルドさん?
思わず、イシュリナさんと顔を見合わせる。
顔は見えないけど、クルビスさんも驚いてるのが魔素でわかる。
ふたりにもフィルドさんが来たのは予想外だったみたい。
「何事なの?そんなに魔素をまき散らして。」
ああ。ドラゴンの魔素で空気がピリピリしてるんだ。
って、尋常じゃないよね。それ。
「ああ。すみません。急ぎで。クルビス、悪いけどハルカさんと一緒に大貝に来てくれないか?ルーシィがハルカさんのケガのことを聞いてしまって荒れていてね。身重なのに、魔素の乱れが収まらないんだ。ハルカさんの無事な姿を見せて、安心させてやって欲しいんだ。」
「あら。あの子ったら。また部屋を抜け出したのね。」
え。え。どういうこと?
あんまり急で頭がついていってないんだけど。
とりあえず、クルビスさんが立ち上がったから、これから大貝に向かうってことでいいのかな?
たぶんそうだよね。
「私も行くわ。もしかしたら、姿を見せるだけではだめかもしれないし。」
「お願いします。」
イシュリナさんも一緒に行くことになって、急いで支度して出ることになった。
私が無事だってことを見せた方がいいみたいだったから、大貝についたら、自分の足で移動させてもらうことをクルビスさんにお願いする。
クルビスさんもそう思ってたらしく、素直に頷いてくれた。
そして、道すがら詳しく聞いてみると、問題の身重の女性は料理教室に参加する予定だったドラゴンの調理師さんだということがわかった。
大貝の奥で暮らしてるから世間の事情に疎くなってて、私のケガのことを知ったのが今日だったらしい。
事情を聞いて、犯人たちに怒りを覚え、私の容体を心配してと、魔素が一気に不安定になったのだそうだ。
ただでさえ、妊娠中は精神や身体に負担がかかることは避けないといけないのに、魔素の強いドラゴンの一族の場合、母体の魔素の乱れがお腹の子に直接影響するらしくて、今は危険な状態らしい。
ルシェリードさんが急に呼びだされたのはこのためだったみたい。
それで、悪化する一方の状況に、フィルドさんが私たちを迎えに来たというわけ。
ということは、かなり状況は悪いんだよね。心配だなあ。
私の姿を見て、納得してくれたらいいけど。