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1700字ほどあります。
美味しい昼食に満足すると、ジュースのおかわりが運ばれてきた。
あれ。もうジュースは貰ってるけど…。
「回復のお祝いに。南では見舞いには花、回復のお祝いには果物を送るんですけど、もうランチの後なのでひとまずジュースで。」
わ。嬉しい。
ちょっとしたことだけど、こういうのって嬉しいよね。
お見舞いの花束も可愛いものだったし、シェリスさんのこういう気遣いが素敵だ。
あ。お礼!いけない。お見舞いの花のお礼がまだだった。
「ありがとうございます。お見舞いの花もありがとうございました。とても可愛くて綺麗な色ばかりで、名前がわからなかったんですけど、何て名前の花なんですか?」
花弁の多い手の平位の淡いピンクの可愛らしい花に、黄色や水色の色違いが添えられていてシェリスさんらしい可愛い花束だった。
いい匂いがして、透き通っても見えるくらい薄い花弁で、窓辺に置くと綺麗なんだよね。
「ユーリカの花です。控えめな香りが良く、気分を明るくさせるのでお見舞いによく使われます。」
「初めて見ました。とても綺麗な花なんですね。」
「気にってもらえて良かったです。この時期は窓辺に飾られると良いですよ。」
窓辺にはもう飾ってあると伝えると、シェリスさんは「楽しみですね。」という。
楽しみ?窓辺に飾るのが?
それにユーリカってどこかで聞いたような。
頭の中で疑問に思ってると、キャサリンさんが思い出したように話し出す。
「キックリの好きな花ですもんねぇ。もう少ししたら、街中で光って綺麗ですよぉ。きっとハルカさんの花にも寄ってきますぅ。」
キックリ!
それって、確か、黄の一族の長のオルファさんが病気になった原因だ。
正しくはそのヒナが原因なんだけど、ユーリカのお花はキックリが水辺の産卵に使うらしくて、恋の季節に光るキックリがユーリカの花に留まる姿はとても美しいと教えてもらった。
ユーリカもキックリも街のひとに親しまれてるし、ちゃんと管理すれば危険はないからと、病気の原因だったことやユーリカの花にくっついてオルファさんの家に持ち込まれたことは内緒にされている。
だから、今も普通に見舞いの花として流通してるわけなんだけど…。
そっかあ。あれがユーリカの花かあ。綺麗な花なんだなあ。
「キックリの季節って今なんですか?綺麗だって聞いたんですけど。」
「ええ。そろそろ水辺に集まってくる時期ですね。水辺を求めてユーリカの花の香りを頼りに移動してくるんですが、そのおかげで季節の最初は街中でキックリが光るんですよ。」
「街中で。それは綺麗でしょうね。」
街じゅうで蛍が見れるってことだもんね。
綺麗だろうなあ。
ヒナの綿ボコリはふわふわ浮いていたけど、成虫もふわふわ浮くのかな?
蛍を見たのだって子供のころに連れて行ってもらった時だけだから、楽しみになってきた。
「しばらく忙しくなりますけどね。」
私が幻想的な光景を想像してわくわくしてると、カイザーさんが苦笑してこぼす。
忙しくって、転移局がってことだよね。
「街がユーリカの花であふれますからね。この時期はお世話になってるひとや親せきなんかにユーリカを送るんで、転移局は結構忙しいんですよ。」
ああ。お中元みたいなものかあ。
綺麗なものが寄ってくるなら、贈り物としては十分だよね。
そっかあ。忙しくなるのかあ。
じゃあ、今のタイミングで戻って来れて良かったかも。
「本当に。ハルカさんが元気になってくれて良かったですぅ。デリアさんと2つでも助かりますけどぉ。今回はキックリの数が多いって予想が出てるんで、ユーリカの出回る数も多いだろうって言われてるんですよねぇ。」
キャサリンさんのため息に、カイザーさんもデリアさんも苦笑してる。
きっと、こんなセリフも毎年のことで、皆わかってるんだな。
「もしかしたら、今日の昼から来るかもしれないぜ。」
「ああ。花屋がどこも慌ただしいって話だ。」
ルイさんとカバズさん達まで苦笑してる。
それに転移局の皆でうわあとため息をついて、笑う。
それじゃあ、シェリスさんのジュースで気合を入れて戻りますか。
さあて、お仕事しましょ。
ここで一区切りです。
まだまだ続きますが、今後は月曜の深夜2時の投稿に抑えます。
当初、木曜の深夜も考えてましたが、年末の予定や他の連載との兼ね合いで、月曜のみの更新になります。
詳しくは活動報告にて。