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「お待たせしました。」
美味しそうな匂いと共に、カラフルな魚介がたっぷり乗ったチャーハンのようなものが出てくる。
チャーハン、というには具が大きいような。
米の色が紫になってるけど、そこまでどぎつい色じゃない。
赤飯くらいの色の濃さだから、これくらいなら食欲も失せない。
「うわぁ。美味しそうですぅ。」
「ピッカですか。食べるのは久しぶりだ。」
嬉しそうなキャサリンさんとデリアさん。
どうやらこの料理はピッカというらしい。
「魚介がたくさん使われてますね。これも南のレシピですか?」
「はい。どの家庭でもよく作られる料理なんですけど、作って欲しいとお客様から要望がありまして。」
良く作るんだ。日本のチャーハンとかと似てるなあ。
魚介の出汁を使っているのか、お皿からいい匂いが立ち上ってくる。
「暖かいうちにどうぞ。」
シェリスさんの言葉に、皆思い思いに胸に手を当てて、食べ始める。
濃厚な魚介の味がスパイスと絶妙に絡んで鼻から抜けていく。
これ、パエリアだ。
チャーハンとかピラフというより、私の印象ではパエリア。
スパイスのせいもあるだろうな。
魚介の出汁が結構濃いから、味はしっかりしてるけどスパイスのおかげで全体的にはあっさりとして食べやすい。
チャーハンやピラフだと、お米に出汁がここまで効いてないんだよね。
うん。美味しい。
「美味しい。魚介をたくさん使うんですね。」
「ええ。南では魚介を使う時はだいたい2、3種類は使うんです。だから北に来て、1種類だけの料理を見た時は驚きました。」
私の質問ともつぶやきとも言える言葉に、デリアさんが律儀に答えてくれる。
北は1種類が多いけど、南は2、3種類かあ。
それなら、出てくる料理も違うものになるだろう。
だから、南にはこういうパエリアもどきやマリネみたいな料理があるんだろうな。
北では、エルフ好みの煮魚や焼き魚が多いし、貝だって同じ種類をたくさんいれてスープにすることの方が多い。
まあ、和食だからそうなるんだけど、それだと何種類も使うことはあまりないと思う。
「南は魚介のレシピがたくさんありそうですね。食べに行ってみたいんですけど、しばらくは無理そうなのが残念です。」
「お待たせしました。こちらとはまた違った趣ですよ。屋台も派手なので、眺めるだけでも楽しいです。」
フライドポテトを追加で持ってきてくれたシェリスさんが、南のことを教えてくれる。
屋台が派手って、そんなのも地区ごとに違うんだなあ。
クルビスさんと、南地区にお刺身食べにいきましょうねって約束してて、楽しみにしてるんだけどなあ。
なんやかやと事件にあってしまって、ちっとも行けそうにないんだよね。
今は他の転移局の勧誘もあるから、余計に他所には行けないし。
あ。魚人の里ならいけるっけ。
事件のせいで、日程がまったく決められてないらしいんだけど、どんなとこかなあ。
そこでなら、魚介食べ放題とかないかな?




