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中に入ると、いつもよりガランとした店内で、チラホラ見えるお客さんは私の姿に驚き、ケガのことを知ってるのか「お元気になって良かったですね。」と笑って挨拶してくれた。
それに笑って「ありがとうございます。」と返して、皆で席につく。
「ご注文は何にしましょう?」
まだ目の潤んでるシェリスさんが注文を取りに来てくれる。
そんなシェリスさんを伺う影が入口にチラホラ。
影が見えたと思ったらリリアナさんが出て行ってるから、追い払ってるんだろうなあ。
そのことは見なかったことにして、メニューを見る。
「ランチってまだありますかぁ?」
「はい。皆さんの数だけご用意出来ます。ランチ4つでよろしいですか?」
「あ、フライドポテトもお願いしますぅ!」
「はい。お飲物はどうされますか?」
飲み物かあ。やっぱりフルーツジュースかな?
基本だしねってことで、季節のフルーツジュースをお願いする。
今回は魔素もそこまで消費してないので、注文はそれで終わりだった。
フライドポテトはキャサリンさんが好きだろうけど、魔素は大丈夫なのかな?
「今日は朝から実家の手伝いもしたんでぇ、お腹減りましたぁ。」
あらら。それはお腹減りそう。
昨日からお父さんと弟さん達が加工品の仕入れのために街の外に出ているそうで、手が足りないそうだ。
「この状況で街を出るのはすごく嫌がってましたけどぉ。今の時期しか手に入らない実とかもあってぇ、母にたたき出されてましたぁ。まあ、気持ちはわかるんですけどねぇ。」
情報通のご一家のお父様だもんね。
私の復帰の前に街を離れるのはいやだったろうな。
想像出来るからか、カイザーさんも笑っている。
そんな和んだ空気に、にわかに騒がしくなる。
「おお。いたいた。ハルカさん!元気そうで良かった!」
「ケガはもういいのかい?」
あれ。ルイさんとカバズさん。
蛍光色なふたりが揃うと目がチカチカするなあ。
きっと、さっきのシェリスさんとのやり取りを誰かから聞いて、わざわざ来てくれたんだろう。
ルイさんはあのケガを目の前で見てるもんね。心配かけちゃったなあ。
「はい。もうすっかり。ほら。」
立ち上がって、何ともないことを見せるために数歩歩く。
それを見て、ふたりともホッとした様子だった。
「良かった。」
「安心したよ。ルイのやつも具合悪くなっちまって。」
「おい!」
あれ。ルイさんが調子悪いって、ケガのことを気にして?
いや。クルビスさんかな。私が倒れかけた時、キれてたし。
「もしかして、魔素にあてられちゃいました?」
「あー。まあ、な。いや、ちょっとだけだぜ?だけど、さすがにな。」
言葉を濁してるけど、ウソはついてなさそうだ。
う~ん。あの時のクルビスさんの魔素って結構膨れ上がってたもんねえ。
は。だとすると、シェリスさんも大丈夫だったんだろうか。
あのやつれ方、心労だけじゃないかも。