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16

 その後は特に変わったこともなく、すぐにお昼になった。

 お客さんも少ないので、外に食べにいくことにする。



「今日は外に食べにいけますねぇ。」



「どこに行きましょうか。ハルカさんのご希望は?」



 デリアさんに聞かれて少し戸惑う。

 う~ん。今日はどこに行っても声をかけられるだろうし、どうしようかな。



「よろしければ、シェリスさんの所にしませんか?ハルカさんも戻られたことですし。」



 カイザーさんの一言で、行き先は決定した。

 私のケガのこともずいぶん心配して下さったみたいだし、お見舞いの花ももらったお礼も言いたいしね。



 手紙のことだって自分のせいだと思っていたから、気にしてるだろうな。

 むしろこっちが悪いのに。シェリスさんは被害者なんだけど、あの優しいひとはそうは思っていないだろう。



 それなら、顔を見せて、直接何ともないって言った方が安心してもらえそうだ。

 そんなことを考えながら通りを歩くと、あちこちから私の身を案じる声がかかる。



 ただ、私の足が綺麗に治っていて、歩いているのを見ると安心して下さったのか、朝みたいに取り囲まれて動けなくなるなんてことはなかった。

 いつもより時間はかかったけど、シェリスさんの店が見えたところで、シェリスさんが飛び出してきた。



「ハルカさん!」



 朝のキャサリンさんと一緒だ。もう目がうるうるしてる。

 数日ぶりなだけなのに、シェリスさん痩せたなあ。



 きっと、予想してたみたいに心配して、気に病んでくれていたんだろう。

 こういう時は、何ともない風に接しなきゃね。



「シェリスさん。こんにちは。ご飯食べに来ました。」



 私の挨拶に感極まったらしく、エプロンに顔を埋めて泣いてしまった。

 そんなシェリスさんを支えてあげているのは、後から出て来た東の戦士部隊副隊長のリリアナさんだ。



 クルビスさんが好きで、お披露目では真っ向から私に喧嘩を売ってきたけど、お姉さんのシェリスさんを助けてからは態度が軟化して、会えば挨拶くらいはする仲になった。

 彼女に会釈し、シェリスさんの前に出る。



「シェリスさんのご飯は美味しいから、楽しみにしてきました。席はまだ残ってますか?」



 いつも通りの普通の会話。

 大丈夫ですよ。もう元気なんです。何ともないんです。



 だから、そんなに気にやまないで下さい。

 美人さんがそんなに泣いたら、変なのが寄ってきますよ~。



 穏やかな魔素で安心してもらえるように努めていると、ふと顔を上げたシェリスさんがキョトンとした表情で私を見ていた。

 あ。魔素を高めたから、最後のちょっと茶化したみたいな空気も伝わっちゃったかな?



 泣きやんで欲しかったのもあるけど、実際、変なのが寄って来てるんだよね。

 シェリスさんが出て来たあたりから、周りで建物の影とかから覗き見してるのがちらほら見える。



 リリアナさんが目を細めて、周囲を威嚇してるから近づけないんだろうな。

 未だに涙をぽろぽろ流してるシェリスさんの瞳は宝石みたいにキラキラしてるし、ラベンダー色の淡い鱗も日の光に輝いてとても綺麗だ。



 爬虫類の美醜がイマイチよくわかんない私でも、シェリスさんの姿や顔を綺麗だと思うから、シーリード族の中ではかなりの美人さんなんだと思う。

 シェリスさん目当てのお客さんも多いそうだし、この中にストーカーとかいたら嫌だなあ。



「ふふ。席はあります。是非寄って下さい。」



 少し不思議そうな顔をしてたけど、冗談だと思ってくれたのか、笑いながらさっきの私の問いかけに返事をしてくれる。

 やっと笑ってくれたシェリスさんに、私も笑い返した。

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