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「水草、ですか。クルビス。」
「はい。…ハルカ、少しだけ、離れる。長、アニス、頼みます。」
私が首をひねってると、クルビスさんがすごく嫌そうに傍を離れると言う。
しばらく私から離れないだろうと思ってただけに、クルビスさんの言葉にはとても驚いたけど、隊長さんの顔をしたクルビスさんを見ると何も言えなくなった。
「はい。いってらっしゃい。」
いつも通りの言葉で見送ると、頷いたクルビスさんはすぐに部屋を出て行き、フィルドさんは「いいな~。今度メラに言ってもらおう。」とつぶやいて、メラさんに報告しに部屋を出て行った。
メルバさんは「新婚さんだね~。」と笑っているけど、それはともかく、菱の実について教えてくださいな。
「ん~。ハルカちゃんの足に打ち込まれたのって、この破片の方なんだよね~。すごく硬いから、破片でも飛ばせばかなりの威力があると思うよ~。無事だったのはハルカちゃんの魔素のおかげ~。」
大きな菱の実とは別に、金属製のお盆にのった指先くらいの小さな破片を見せられる。
これが足に食い込んでたのか…。こっちの方が先が鋭くて痛そうだなあ。
白っぽい内部も見えてる。
中は地球と同じく白いんだな。
もしかして、私が骨かと思ってたのって、これかな。
そして、菱の実丸々1個だと大きすぎるから、砕いて使ってると。
でも、飛び道具と魔素は関係ないような?
魔素は多いとよく言われますけどね。
「魔素のおかげ、ですか?」
「そう~。こっちでは強い魔素は防御効果も高いからね~。あの場で隊士以外ではハルカちゃんが一番魔素の質も量も高かったから、骨に少し食い込むくらいですんだんだよ~。他の子だと足が砕けてたかもね~。」
ため息をつきながら説明してくれるメルバさん。
えええ。足が砕けるって、そんな。あ、アニスさん、本当ですか?
「ええ。一緒にいたのは北西の地域の方々ですよね?術士の方はともかく、他の方にあたってたらもっと大変なケガになっていたと思います。」
答えを求めるようにアニスさんを見ると、顔色を悪くしたアニスさんが本当だと教えてくれる。
うわあ。クルビスさんには悪いけど、私で良かったかも。
「そうなんですか。あの、骨に食い込むって、ヒビが入ってるってことですか?」
「うん。少しだけね~。安静にしてれば数日の治療で治るよ~。でも、それでも十分大ケガだからね?安静にするんだよ~?」
「はい。ありがとうございます。」
数日かあ。こっちの治療は魔素のよるところが大きいから、私ならそれくらいなんだろうな。
普段は意識しないけど、こういう時は魔素が多くて良かったって思う。