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「さ、後はキィ君に任せて、僕たちは戻ろう。治療の続きをしないとね。」
話が一区切りついたところで、メルバさんが声をかける。
忘れてたのに、傷がまたズキズキし始める。
手術しないといけないんだっけ。
切開とかするのかなあ。うう。麻酔してもらえるよね?
「ハルカ。少し我慢してくれ。」
クルビスさんがそうっと抱き上げてくれる。
平気といえば平気だけど、やっぱり動くと痛みが走る。
あ。カイザーさんに先に出ること言っておかなきゃ。
話が出来る余裕があるなら、上司や同僚に一言あった方がいいよね。
「カイザーさん。キャサリンさん、デリアさん、お先に失礼しますね。」
「無理なさいませんように。ケガを直すのを最優先にして下さいね。」
「安静にして下さいぃ。」
「お大事に。」
カイザーさんから釘をさされつつ、キャサリンさんとデリアさんが心配そうに見送ってくれる。
シェリスさんとルイさんにも挨拶して、私たちは北の守備隊本部に戻ることになった。
「お待ちしてました。こちらへ。」
近くの詰め所から転移すると、待ち構えてたリリィさん達女性隊士に誘導されて、診察室の奥にの部屋に移動する。
昨日食事した場所が今日はたくさんの薬品や布が集まった治療室に変わっていた。
これが本来の使い方なんだろうけど、いつもフェラリーデさんとお茶してたから、どうにも食べる場所ってイメージの方が強いんだよね。
私が部屋の変わりように驚いていると、いつの間にかクッションをたくさん置いたベッドにもたせ掛けられ、傷を負った足は綺麗な布の上に置かれた。
クルビスさんは私をベッドに静かに置くと、ベッドの横に座って手を握って離れようとしない。
蜜月に伴侶がケガを負ったなんて、耐えられないんじゃないだろうか。ありがとう。大丈夫ですよ。
うわあ、傷見たらまた血が滲んでる。
魔素が見えるようになったからわかるけど、傷口からどんどん魔素が漏れていってるし。
魔素がどんどん…あれ、クルビスさんからも漏れてる。
もしかして、さっきからクルビスさんが手の平を合わせるように握ってるのって、魔素の補給とか?
やっぱりそうだ。
ちょっとずつだけど、身体に入って来てる。
でも、外に漏れてる魔素の方が断然多い。
異世界に初めて来た時もしてもらったけど、これってちゃんと見ると効率悪いんだなあ。
あの時はポム茶を飲むまでずっと離さなかったけど、今も同じくらいヤバい状況ってこと?
前の時と違って、言葉も通じてるし、結構元気なんだけど。