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「報酬をキャサリンさんにあげたんですか?」
カイザーさんがクルビスさんの考えに驚いたように声をかけてくる。
それはそうだ。報酬だったら簡単にひとにあげたりしないよね?
「ん~。報酬なら私にはくれないと思いますけどねぇ。詳しくはルイさんに聞いた方が早いと思いますよぉ?籠っちゃうカバズさんを心配して、1日に1度は食事をしに外に連れ出してましたからぁ。その時にいろいろ聞いてるはずですぅ。」
確かに、ここで私たちが話していても、詳しいことは何もわからないもんね。
ルイさんをここに連れて来ることは出来なかったのかな?
「そうですか。彼は今休んでいますので、後でお話を聞きますね。魔素の暴走にあてられたようですが、少し休めば回復するでしょう。」
あ。ルイさん具合悪いんだ。
カバズさんのすぐ傍にいたもんねえ。
私やキャサリンさんやカイザーさんは術士や転移の仕事のおかげか何ともなかった。
でも、一般の商人であるルイさんには暴れ狂う魔素はきつかっただろう。
魔素は存在するためのエネルギー。
命そのものと言ってもいい。
こっちの世界では、皆そのエネルギーが強いらしくて外に漏れ出るほどにある。
その量や質が髪色や体色に現れるんだけど、輸血だって合う合わないがあるみたいに、魔素にだって相性がある。
色で大体わかるんだけど、ルイさんの体色はピンクでカバズさんは黄色だ。
他の色も持ってるかもしれないけど、見えてる大部分はお互い違う色。
つまり、ルイさんにカバズさんの魔素は合わない。
その上、荒れ狂ってバランスの崩れた魔素を浴びたら。
気分も悪くなるよね。
早く良くなるといいけど。
「カバズさんやルイさんから聞いたことはまたご報告しますね。ただ、効率よく話を聞くためにも、今の時点で集められるだけ情報を集めておきたいと思っていますので、ご協力お願いします。」
「なるほどぉ。確かに、相手にしゃべらせるのって大変ですもんねぇ。何が大事かなんて、素人にはわかりませんしぃ。」
フェラリーデさんの説明に頷くキャサリンさん。
たしかに、事情を話して下さいっていっても、ルイさんも突然に事態にとても驚いていたし、何から話していいかわからないだろう。
それより、カイザーさんみたいに事態を外から眺めていたひとの話の方が、客観的な事実を知ることができそうだ。
それで、聞くべき事柄を整理して、当人たちから話を聞く。
うん。こっちの方が効率が良さそう。
守備隊にもマニュアルとかありそうだなあ。
不思議なのは、キャサリンさんも聞きとりに関して妙に知ってるような風だってことかな?
転移局の術士さんだよね?
「うちの父も「情報を集めれば、さらに情報が集まる。」ってよく言ってますぅ。」
ああ。ご実家が情報通なんだっけ。
お父様の教育の賜物かあ。もしかして、家族総出でこういう考えなのかな?