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 ふらあっと、揺れるようにリックさんの身体が傾く。

 あああ。もう休んで下さい。



「あの、よろしければ、座ってお話ししませんか?リックさんだけでも。」



 カイザーさんも同じことを思ったらしく、座ることを提案する。

 ゼフさんも頷き、用意して下さっていた大きな箱を出してきてくれた。



「粗末で申し訳ありません。うちではイス替わりに箱を使うのです。」



「十分です。ありがとうございます。」



 丈夫で立派な箱だ。

 クルビスさんが載っても大丈夫そうだし、表面も滑らかでささくれもない。椅子には十分だった。



 箱はたくさんあるらしく、大勢で押しかけたにも関わらず全員が座れた。

 交渉は立ったまますることが多いそうだから、カイザーさんも最初は立ったまま話すつもりだったんだろうけど、こうなったら腰を落ち着けて話せる方が良い気がする。



 座るとリックさんも落ち着いたらしく、少し楽そうだ。

 そこでようやくこちらの自己紹介をして、詳細の説明に入ることになった。



「うちの局員がこちらのシェリスさんとルイさんの見積もり依頼の手紙と紹介状を通常の方法でそれぞれ広場の転移局に転移させました。大きい転移局に集められた手紙はそこから配達され、記録が取られるのですが、今回のことで広場の転移局には見積もりの手紙の記録しかないことがわかりまして。



 転移局の過失で起こったことですので、事情の説明と謝罪、そして交渉の仲介をするために同行させて頂きました。守備隊には今回のことは転移局から紹介状の紛失があったとして届け出ています。」



「届け出されたんですか?」



 ここでリックさんが信じられないとばかりに声を出した。

 ゼフさんも声は出してないけど、まさかって顔をしている。



「はい。クルビス隊長に相談しまして、すぐに届け出をしました。リックさん達にはご迷惑をおかけすることになるでしょうが、今度こそきちんと責任の所在を明らかにしたいと思っております。」



「俺はいいぜ。シェリスさんも了承してる。ちょっと騒がしくなるかもしれないけどさ、今回のこと、ちゃんと表に出したいんだ。リックさん、店が大変な時に後から了承取るような真似して悪かったけどさ、シェリスさんのことも含めて、協力して欲しいんだ。もう、無かったことにしたくないんだよ。」



 カイザーさんの後押しをするようにルイさんが話しだす。

 最後の言葉は絞り出すようだった。



「…そうですね。北西の地域への差別は目に余るものがあります。私は東の出身ですが、店へ来て、初めて見積もり依頼と紹介状が同封されてきたのを見た時は首を傾げてしまいましたから。」



「ばかばかしい話だ。手紙が無くなるなんてな。しかも訴えたら、ケガ人が出るなぞ。」



 リックさんもゼフさんも顔をゆがめてため息をつく。

 昔あったことをふたりもご存知なんだ。ううん。きっと皆知ってて、関わらないようにしてたんだろう。



「守備隊でも今回の事態の表面化と犯人の特定をしたいと思っています。隊士を付けますので、お二方の身の安全は保証します。」



 最後の止めとばかりに、クルビスさんも口を開く。

 クルビスさんの言葉を聞いて心が決まったのか、リックさんとゼフさんが見合わせて頷く。



「わかりました。今回の届け出について、当店からは取り下げは願い出ません。それくらいしか出来ませんが、よろしいでしょうか?」



「はい。それで十分です。ありがとうございます。」



 ホッ。これで取り下げて欲しいって、外部から届け出が無かったことになることはなさそうだ。

 隊士さんがいれば、脅しに来ることは出来ないだろうしね。まとまった所で、ルイさんが話に入る。



「よし。じゃあ、次は俺の番、いや、シェリスさんの番だな。」



「わかっとる。そう急ぐな。ルイ坊、お前さんはせっかち過ぎるのがたまに傷だな。」



 ゼフさんの呆れた声にルイさんは少し驚いた後、「悪りい。」と照れくさそうに言った。

 それで何だか和んでしまって、誰からともなく笑っていた。

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