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「この度は、当方の不手際で大変なご迷惑をおかけすることになってしまい、まことに申し訳ありません。」
カイザーさんの謝罪に転移局の皆で礼を取って頭を下げる。
クルビスさんの許可が出ると、すぐさまカイザーさん達に知らせて謝罪の段取りを決めた。
すると、説明のために一緒について来たキィさんの提案で守備隊に泊まっていく方が安全のためにもいいだろうと言うことになった。
カイザーさん達は隊士さんに付き添ってもらいながら着替えを取りに帰って、そのままお泊り。
ルイさん達はカイザーさんが朝早くから、あらかじめ決めていた集合場所に迎えに行って守備隊まで連れてきた。
こっそり警備のひとをつけてたみたいで、ルイさん達の元には怪しいひとは来なかったそうだ。
「俺よりカイザーさんの方が心配だよ。ずっとつけてたやつがいたんだろ?夜は守備隊の方に行ったって聞いて安心したけど。」
どうやら転移局を探ってたひとはかなり怪しかったらしく、ご近所でウワサのまとだったらしい。
色も濃い緑だったそうだから、余計目立っただろう。
そんなことがあったからか、今朝になって同行者が増えてることも予想していたらしく、クルビスさんの姿を見付けて「これなら表立って邪魔できねえな。交渉しやすくなるぜ。」と嬉しそうにしていた。さすが商売人。
シェリスさんは逆に朝になって増えてる同行者に驚いて、「私のせいで…。」と恐縮して小さくなってるのをキャサリンさんと私でなだめるのが大変だった。
ただ、カイザーさんの後をつけてたひとのことは知ってたらしく、危険だからという理由でなんとか納得してくれた。
それで、ようやくミネルバ工房につくと、入口に年をとったヘビの一族の男性と、若いヘビの一族の男性がいた。
私たちに気づくと深々と礼を取って、店の中に案内して下さった。
そして、開口一番にカイザーさんが冒頭の謝罪をしたというわけ。
ミネルバ工房のお二方は目を見開いて驚いてたけど、若い方のヘビの男性は我に返ると慌てて声をかけてきた。
「丁寧な謝罪ありがとうございます。事情は義父から聞いております。頭を上げて下さい。」
礼を解くと、若いヘビの男性はリックさんと名乗ると、「こちらこそ申し訳ありませんでした。」と謝罪をし始めた。
北西の地域のことは知っていたはずなのに、紹介状の確認もとらず勝手に見積もりを送ってしまったことを気に病んでいたそうだ。
「義父と伴侶がいなくなってから、支払い不備が続きまして。いくつか連絡が取れなくなった所もあるのです。それで、最近来た注文には事情をお話しして、なるべく先に回収できるよう見積もりを出すようにしていました。」
それで、シェリスさんにもあんな見積もりを。
寝てないのかな。具合が悪そうだし、魔素が不安定で揺れている。
「ヘビの一族、ゼフと申します。だからと言って、息子は事情も話さずに一度の払いを請求することはしていなかったのですが、言い訳になりますが、ここしばらく休むことが出来ていなかったようで。」
あああ。フラフラしてるよ。リックさん。
座って下さい。とりあえず。