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「ん~。なあ、クルビス。これ、ここと、ここんとこ見て欲しいんだけどよ。」
私とクルビスさんの様子を見たキィさんが別の書類を出して、クルビスさんに話かける。
さすがに、目を開けてその部分を読むクルビスさん。
「この見積もりって、前に踏み込んだとこで騙された子のだろう?で、その騙された時の紹介状書いたのが、例の詐欺師のリーダーなんだよ。押収品からキーファが見つけて来た。字が劇場の書類と一致するってさ。」
え。詐欺師って、カバズさんに無茶な要求したり、変な箱送ってきた、あの?
え、え、何でシェリスさんに紹介状を?シェリスさんも詐欺の被害者ってこと?
まあ、あの壊れた調理器具は酷かったけどね。使えなかったし。
色の差別もあったみたいだけど、もともと詐欺だったんだな。
「まあ、箱に押し込まれてたらしいから、ちゃんとした紹介状じゃないのかとも思ったんだけどよ。そもそも紹介状なんて書いて騙したら捕まる危険が高くなるし、ダメだったときに自分が支払うなんて内容といい、これまでのやり口から見ても変だからさ。そこんとこ確認したいんだよな。新手の詐欺だとまずいし。
でも、件の詐欺師は中々しゃべってくれねえし、残党もいるから、表立って被害者の女性を呼び出すわけにもいかねえし、なのに、今回の件だろ?カイザー局長が行くとなると、警備の隊士もついて行くことになるし、それを勘違いされたら貴重な証人が危険かもしんねえんだよ。」
シェリスさん大丈夫かなあ。
カイザーさんへの警備が変な誤解を与えないといいんだけど。
あ。でも、もう今日事情の説明で寄ってるよね。
ウワサにはなってるかも。ルイさんのことがあれだけ広まってれば、ありえそう。
「あ、あの、今日の昼から、カイザーさんが事情を説明しに、ルイさんとシェリスさんの所に行ってます。それで、その時後をついて来たひとがいたみたいなんですけど。」
「あ~。もう動きがあったか。まあ、それは転移局関係なのか、残党の方なのかはわかんねえけどな。それも時間の問題だぜ。隊士が動いたのはすぐウワサになるしな。こうなると、表立っての理由がいるんだよな。もっと隊士を動かせる。クルビス。悪いが、この件、ハルカさんにもお前にも動いてもらえないか?」
私、とクルビスさん?
え。え。どういうこと。
「残党には術士崩れのもまだ残ってるみたいだし、ミネルバ工房は大通りを通っていくから、警備が難しい。出来ればうちの部隊からも警備をつけたい。だが、今、表立ってそこまでの警備をつけられるのは、今回の件ではレシピ持ちのハルカさんだけだ。んで、しぶってるお前さんも一緒に行けば、さらに安全なんだよ。」
私に説明するように話した後、キィさんとクルビスさんのにらみ合いが続く。
そうか。シェリスさんの安全を考えると、私を名目に強い警備をつけたいんだ。
「ふう。わかった。俺も一緒にいく。最初に相談を受けたから、ということで、ハルカと一緒に。」
クルビスさんが折れた。
当初のもくろみより、だいぶ物騒な話になっちゃったけど、とりあえずこれで皆一緒にいける。
クルビスさんの夢も気になるけど、狙われるのは私じゃなくてシェリスさんなのかもしれないし、それならそれで、クルビスさんに周りの警備を厳重にするようお願いして、私は大人しくしておけば…。
それが一番難しいかなあ。我ながら大人しく出来てたことって、あんまりないような気がする。うう。