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「あはは。今のクルビス君は、ハルカちゃんのことに敏感だからね~。そんな雰囲気を感じただけでも不機嫌になるだろうね~。でも、ハルカちゃんが手続きしたなら、一緒に行った方が確かに紹介状があったって証拠になるわけだし、さらにデリア君も行けば、誰も文句つけられないんだよね~。」
あ。そうか。
私のせいだからついて行きたいって思ってたけど、私は実際に紹介状と見積もりの手紙を見て触ってるわけだから、私自身が証人になれるんだ。
「でもぉ、それって局員ほとんどじゃないですかぁ。あんまりたくさんで行ったらかえって悪いウワサになりませんかぁ?」
「じゃから、ハルカちゃんなんじゃ。カイザー君と2つでも謝罪には十分と周りは見る。」
「立場もあるが、何より魔素が素直じゃからな。ウソ言っとらんのがすぐにわかるからの。」
「しかも、数日しかたっとらんなら、手紙に転移の時の魔素の痕跡がのこっとる可能性が高い。黒の魔素なぞ、調べたら一発でわかるじゃろうて。」
キャサリンさんの心配にしたり顔で返す長老さん達。
魔素の痕跡かあ。転移も私がしてるから、それは残ってそうだなあ。
「まあ、だからハルカちゃんも一緒に行けるといいんだけど~。上手く説得してハルカちゃんを連れ出せたとしても、今度はデリア君とキャサリンちゃんが心配だから、それなら全員で行った方がいいんだよね~。」
「え?」
「私たちですかぁ?」
デリアさんとキャサリンさんがきょとんとしている。
心配ってことは、ふたりが狙われるってことに聞こえるんだけど。
「カイザー君には警護がついたけど、他の子にはいないんでしょ~?」
「…はい。届け出の後で挨拶に私だけで行ったのも、後をつけてきている者がいましたので、元々警護のついているハルカさんが一緒なら安全だろうと思ったからです。」
カイザーさんの発言にハッとなる。
そうだ。だからクルビスさんもわざわざカイザーさんと一緒に守備隊に戻ったんだっけ。
届け出を先にするよう勧めたのも帰りに危険な目に合う可能性があったわけだし。
それなら、他の局員だって狙われるかも。
「まあ、手紙の紛失だけじゃね~。危険があるかもしれないからってだけで貸し出せる隊士は、2つが限界かな~。」
メルバさんの指摘にそれもそうだと思う。
手紙がなくなったっていうだけで、命の危険がなんて誰も思わない。
いちいち訴えに付き合って警護を出していたら、ただでさえ忙しい隊士さん達の仕事がさらに忙しくなってしまうだろう。
だから、警護も本来なら出せないところを、実際は2人も出してもらえた。
以前に脅しで訴えが取り下げられたなんて事があったからだけど、今回のことは訴えの内容からすると異例になるだろう。
どう処理してるのかわからないけど、後で文句とかでないといいけど。
「なら、皆で行っちゃいましょぅ!それが話が早いですぅ。相手の工房さんにも、何かあってはいけませんしぃ、警護の数は多いにこしたことありませんよぉ。」
「クルビス隊長を説得出来たら、ですよね?」
「朝はどうしても話すことが出来ませんでしたから。どう切り出したものか。」
「ううう。それが一番の難関ですぅ。」
それまで話を聞いていたキャサリンさんが立ち上がって提案すると、デリアさんカイザーさんが冷静につっこむ。
立ち上がったキャサリンさんもしゅんとなってイスに座ってしまった。
「ハルカちゃんのおねだりでどうにか出来んかのう。」
「おお。そうじゃ。それなら一発じゃろうて。」
「実は、昨日の時点で却下されてるんです。」
「もう話とったのか。そうなると、中々難しいのう。」
ホント、どうしよう。
皆一緒ならなんとか説得…できないかもなあ。