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そんな決意をひっそり固め、私もおしゃべりに参加した。
長老さん達が聞き上手なものだから、北西の地域のおすすめの店とか、美味しい料理とか、ついでにルイさんとシェリスさんの一件に関していろいろ聞きだされてしまった。
「ほう。それでルイがかけこんで来たのか。」
「そりゃあ、怒るじゃろ。」
「ううむ、しかし、手紙の紛失が原因とあっては、向こうも条件を飲むじゃろうて。」
ついででしゃべちゃっていいのかなあ。
まあ、メルバさんの術式か、長老さんの術式かわからないけど、部屋には防音が施されてるから盗み聞きされる心配はないけどね。
キャサリンさん達もそれがわかっててしゃべってるんだろうなあ。
カイザーさんにも、お詫びに行った時のこととか聞いてるし。
メルバさん達はしゃべったりしないだろうしね。
カイザーさんも許してるし、キャサリンさん達からは安心してる魔素を感じるし、いいかな。
「じゃあ、許してもらえたんですねぇ。」
「ええ。おふたつ共、手紙の紛失に関して親しい方に可能性を言われていたようで。私の話を静かに聞いて下さいました。ただ、シェリスさんがご自分のことを責めてしまわれて。」
真面目なシェリスさんならありそう。
でも、それを言ったら、受け付けた私が知ってれば、ううん、せめて確認しておけば済んだ話だし。
「シェリスさんらしいですけど、自分を責めるのは違いますよね。責任っていうなら、確認しなかった私のせいですし。」
「それを言うなら私もですよ。ハルカさん。」
「それを言うなら、こんな変な送り方しないといけない転移局の責任って、これもう言いましたねぇ。」
あはは、と笑うキャサリンさんに皆も笑う。
明るい彼女にはいつも助けられる。
「気にしなくていいのにね~。元々、荷物を送る仕事に私情が入るのがおかしいんだもんね~。最初はそんなこと無かったのにな~。」
「いつ頃からでしょうなあ。」
「赤の先代が亡くなった頃から、でしたかの。」
「おお、そうじゃ。スタグノ族の血族と色を尊ぶ声に、周りもずいぶん引きずられておって。」
赤の先代が亡くなった頃って、リッカさんやアースさんのお父さんたちが殺された事件だ。
たしか、あの事件はスタグノ族それぞれが血族至上主義を掲げてたひと達が、シーリード族に習おうとしていた長を暗殺したんだよね。
その事件で、リッカさん達だけでなく、キィさんもご両親を亡くされてる。
その時なら、色に偏ったこだわりを持った考えが広まってしまってもおかしくはないかも。
「技術者に魔素の量は関係ないって言ってるのにね~。」
「まったくですな。大事なのは己を律することと、日々の研鑽です。」
「術士だってそうですぞ。魔素があっても使えなければ宝の持ち腐れ。」
「単色であっても、生き物を転移させるといった細やかな術式が使えるわけではありませんからな。」
メルバさんと長老さん達がため息をつく。
たしかに、技術者さんなら日々の修行が作品に出るだろうし、術士さんなら、毎日の修練で魔素の微細なコントロールが出来るようになるんだもんね。
それが当たり前なはずなのに、違うものが注目されているなんて。
何度聞いてもおかしな話だ。