20
「自覚しとらんかったようじゃのう。」
「ハルカちゃんはすごいんじゃぞ?」
「具体的に言うとじゃな、転移局の位が小規模から中規模に上がったじゃろう?あれは、ハルカちゃんがおらんかったら、視察の結果だけではどうにもならんかったんじゃぞ?」
キャサリンさんの言葉に内心こまっていると、長老さん達が知らなかった事実を教えてくれる。
転移局の見直しって、あの視察のおかげじゃないの?
視察に来たひとって偉いひとだったみたいだし、カイザーさんの話だと転移局の機能がきちんとしてないのが嫌いなひとだったようだから、転移局の位が上がるのも早かったんだと思ってた。
「黒の単色だから、仕事量の目安にはされたようですけど、位が上がるといった話とはさすがに関係ないんじゃないかと…。」
むしろ関係あったらマズいような。
局員ひとりで対応が変わるってダメでしょう。
「それが変わったのよなあ。」
「うむ。黒の単色というのは、良くも悪くもそれだけ影響があるということじゃ。」
「それに、ハルカちゃんがいるだけでも、北西の転移局の評判は良くなっておるしの。現に、デリア君もハルカちゃんが来たから、北西の地域にこれたわけだしの?デリア君も良い子じゃから、それでますます評判もよくなっとるし。」
いやいやいや。普通に仕事してただけですから。
ね?カイザーさん、って。
「そうですね。ハルカさんが楽しそうに働いて下さるから、うちの転移局は女性に働きやすい職場だと言われるようになりました。」
「デリアさんも好青年だって、評判なんですよぉ。」
「好青年かはわかりませんが、私も北西の転移局に務めることが出来て良かったです。何年も却下されてた要請がようやく通って。同僚も喜んでくれたんですが、「黒の単色」でもきつい職場にいくなんて大丈夫かって、心配もされました。」
デリアさん、その話初耳です。
なのに、カイザーさんもキャサリンさんもうんうんって頷いてるし。
「北西の地域はどんどん大きくなってるから、ここで術士の数を増やせて良かったよね~。」
「そういえば、ずいぶん屋台の数も増えておりましたな。」
「そうそう。屋台以外も珍しい料理の店も出来ていて。」
「何でしたか。南の方のもので、魚介をふんだんに使った料理が人気とか。」
食べてみたいですなあ。と別の方に話が流れていく。
良かった。自分に話題が集中するのって、疲れるから。
でも、注目は良くも悪くも受けるものだと思っていたけど、思った以上に黒の単色がいるっていう事実は職場に影響を与えていたようだ。
皆当たり前だと思ってるから、私から聞かないとこういう話って出てこないんだよね。
そうそう街に出ない長老さん達まで知ってたとなると、もう街中がそう思ってると考えてもいいかも。
今はクルビスさんの蜜月があるから、転勤や転職のお誘いも断りやすいけど、終わったってはっきりわかったら面倒なことになりそうだなあ。
ただ、今回の手紙の紛失に関しては、いい盾になってくれそうだけど。
ここまで注目されて、影響が強い局員がいるんだもん。
私がシェリスさん達と頻繁に交流していれば、表立って脅しなんかは出来ないだろう。
旦那様は隊長さんだしね。