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「それを僕が方々に配ってたんだけどね~。その時にカイザー君とばったり会ったから、お誘いしたんだよ~。」
え。誘ったのってメルバさんだったんだ。
そっか、じゃあ、さっきのお礼はそれも含めてだったんだなあ。
「今日はどこに行っても捕まってしまったでしょうから、誘っていただいて一も二も無く頷いてました。」
「ここに来た時も注目されてたもんね~。帰りは大丈夫だった~?」
「はい。クルビス隊長の采配で、警護をつけて頂きましたので。」
「さすがクルビス君~。気が効くよね~。」
安心したように頷くメルバさんに、長老さん達も私たちも頷く。
本当にそう。後をついて来てたひとがいたみたいだし、もしかしたら帰りに襲われてたりしたかもしれない。
「ルイがかなり騒いできたようじゃったし、警護がないと危なかったかもしれんのう。」
「話を聞く限り、転移局の方も大変じゃったみたいじゃし。」
「ルイもなあ。もうちょっと魔素を抑えられるようになるといいんじゃがなあ。」
「長老さま方もご存知だったんですかぁ?」
ええ。そんなにこっちに来ない長老さん達まで知ってるって、今日知ったってことだよね?
どんだけ広がってるんだろう。
「ここに来る前に薬師通りに寄ったらのう。」
「ルイがものすごい不機嫌な魔素で転移局に駆け込んでいったと聞いたんじゃ。」
「また何かあったのではと、薬師通りの者は心配しておった。」
ああ。ご近所さんだものね。
北西の地域には安くて美味しいお店や屋台も多いから薬師通りのひとも結構みかける。
何より、子供たちの学区が同じだから、親同士は顔見知りだもんね。
エルフは色で差別する習慣が無いから、エルフの多い薬師通りとはもめることがほとんど無いようだ。
「そうですかぁ。ルイさんわかり易いですもんねぇ。私の幼馴染も心配してくれて、荷物送るふりして様子を見に来てくれたんですよぉ。」
「ほお。キャサリンちゃんと同じくらいというと…。」
「青の一族のとこの小僧っ子かの?」
「そういや、年回りが同じくらいじゃったの。挨拶してくれたわい。」
良く知ってるなあ。
長老さん達、薬師通りには詳しいみたいだ。
エルフが多いからかな。
薬の監督もしてるそうだから、そのせいもあるだろうけど。
「味方は増えてますよぉ。それが表に出て来たのも、ハルカさんのおかげですぅ。」
え。わ、私?
前にも聞いた気がするなあ。でも、実感みたいなのは視察のあの時くらいなんだけど。