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案内されたのは、2階の医務局の奥の部屋だった。
会議室はもう隊士さんで一杯らしい。
普段他の詰め所に行ってるひと達も順番で食べに来てるから、席がいくらあっても足りないのだそうだ。
でも、これは気遣いもあるだろうな。
北西の転移局が届け出を出したのはもう知れ渡ってるようで、ここにくるまでもあちこちから視線を浴びたし。
ここは、私が守備隊に来て最初に案内された部屋で、限られたひとしか入室出来ないから落ち着いてご飯が食べられるだろう。
隣はお風呂や魔素で動かす『洗濯器』があって、ここは一時的な病室も兼ねてて泊まれるようにもなってる。
フェラリーデさんの執務室も兼ねてるので、4、5人は集まってもゆったり出来るようになってるけど、ベッドがなければもっと広いだろう。
部屋の真ん中には大き目のテーブルがおかれ、そこにはすでに先客がいた。
こちらもお久しぶりの赤、黄、青の信号機カラーだ。
「おお。帰って来た。たくさんあるのう。」
「お帰り。ハルカちゃん。おお。大きな皿じゃのう。重かろう。さ、貸しなさい。」
「カイザーも皆も疲れたろう。ほれ、ここに座りなさい。皿はここじゃ。」
長老さん達が笑顔で迎えてくれて、口ぐちに声をかけてくれる。
でも、お皿の方に目がいってると思うのは気のせいじゃないと思う。
はいはい。ご所望の果物はここですよ~。
あ。取り皿ありがとうございます。あ、お箸も。
「ほれほれ、こっちは大丈夫じゃから、仕事に戻りなされ。」
「うむうむ。余計な輩は近づかせんでな。」
「安心しなされ。食事が終われば、送り届けるゆえ。」
「では、伴侶をよろしくお願いします。」
あ。クルビスさん行ってらっしゃい。
お仕事頑張ってくださいね。
「うん。行ってくる。」
は~い。ちゃんと大人しくここでご飯食べてますから。
長老さん達にメルバさんもいるし、大丈夫ですよ~。
「まだ蜜月なのに、すごいのう。」
「メラ様の教育の賜物じゃな。」
「ことあるごとに言い聞かせておったしのう。」
うん。メラさんの苦労がわかる会話ですね。
お義母さま、ありがとうございます。
「あの、長老さま方、お久しぶりです。」
「久しぶりじゃのう。」
「元気にしておったか?」
「立派な若者になったのう。早いもんじゃ。」
「はい。」
挨拶をしたカイザーさんにニコニコと応対する長老さん達。
あれ?長老さん達って街の方にはあまり来ないのに、カイザーさんと知り合いなのかな?
メルバさんは、転移陣のメンテナンスとかもあるから、顔は合わせてるだろうけど。
あ、薬師通り出身だから、それでかな?
「さあさあ。立ってないで座りなさい。」
「ほら、堅苦しいのは抜きじゃ。」
「そっちの2つは新しい子じゃのう?可愛らしい術士と若い男の術士が増えたと聞いておったが、2つともほんに若いのう。」
詳しい話を聞く前に、どんどん長老さん達のペースで進んでいく。
まあ、そうしないと、緊張で固まってるキャサリンさんやデリアさんが動けなかっただろうけどね。
うきうきしてる顔からして、根ほり葉ほり聞かれそうだなあ。
まあ、他の部屋で視線浴びながら食べるよりは良さそうだけど。