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守備隊に近づくにつれ、喧騒が大きくなる。
建物の前まで来ると、いつもの入口の外にもテーブルが置かれ、たくさんのひと達が食事をしていた。
「すごいひとですね。」
「本当に食べきれない程来たからな。近所にも声をかけたらしい。」
お祭りみたいな騒ぎになってる。
これ、次から次へと集まってない?
しかも、皆さん食器持参だ。
用意がいいなあ。それとも、持ってきて欲しいってお願いしたのかな。
中は一層騒がしかったけど、私たちを見付けると口ぐちに「お帰りなさい。」と声をかけてくれる。
転移局のメンバーにも「お疲れ様。」と声をかけていた。
「お帰り~。皆も来たんだ~。」
そこに、いつもの独特のイントネーションが加わる。
メルバさんだ。金髪を一つにくくって、いつもみたいに、街のお兄ちゃんと変わらない恰好でカウンターにならんでいる。
「メルバさん。お久しぶりです。ただいま帰りました。」
「こんばんわ。長さま。」
「長さまぁ。こんばんわ。」
「こんばんわ~。あ、彼が新しい子だね?」
私やカイザーさん、キャサリンさんは挨拶を軽くかわす。
でも、初対面のデリアさんは固まってしまっていた。
そういえば、メルバさんってすごく偉いひとなんだっけ。
軽い口調と気さくな性格で忘れがちだけど、偉大なエルフの長だ。
彼のおかげで、衰退の一途をたどっていたシーリード族は数を増やすことができ、多くの病気の治療法が見つかった。
ルシェモモの街の発展だって、あー兄ちゃん経由の技術もかなり使ったとこっそり教えてもらっている。
そんな偉人が目の前にいたら、緊張するよね。
日本だと、テレビに出てる有名人にあった気分だろうな。
「ここだと難だから、二階に行かない~?下は一杯だから、上でも食べてるんだよ。」
デリアさんの緊張を察したメルバさんが、とりあえず場所を移そうと提案してくる。
その手にはしっかり果物の大皿が数枚乗っていた。
「はい。あ、ひとつ持ちますよ。」
「あ、そう~?じゃあ、そっちのやつ持ってきてもらっていい~?」
手伝おうと手を差し出したら、メルバさんに目線でカウンターの大皿を示される。
え。まだ持って行くんですか?メルバさん以外にもいるってことかな?
「は、はい。」
「私も。」
「私もお手伝いしますぅ。」
慌ててその場のメンバーで大皿を受け取っていく。
これ、どれも5、6人分はあると思うんだけど…まさか、ひとり分じゃないよね?