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片付けが終わると待ってたかのようにクルビスさんが姿を現した。
外をこっそりのぞき見ると、誰もいない。
「大丈夫だ。何もない。」
もしかして、クルビスさんが追い払ってくれたのかな?
カイザーさんをつけてるひとがいるって報告は聞いてただろうしね。
「ありがとうございます。あの、今日は皆も守備隊でご飯食べることになったんです。」
旦那様の気遣いに感謝しつつ、皆で守備隊にご飯を食べに行くことを伝えると、すでに席は取ってあると返事が返ってくる。
私が他のひとと一緒に食事するのに、何でこんなにすんなり頷いたのか不思議に思ってたら、理由があったようだ。
どうやら、仕事でクルビスさんは急に忙しくなってしまったらしく、今日の夕食は私ひとりの予定だったのだそうだ。
他の隊士さんも忙しくなってしまったので、あまり私に他人を近づけたくないクルビスさんはどうしようかと思っていたらしい。
「そこにちょうど、協力した礼にと果物が大量に贈られてきたんで、カイザー局長をお誘いしたんだ。珍しい果物ももらったんで、うちの調理部隊が張り切ってたしな。」
そういうことなら納得です。それなら、遠慮なく、皆でわいわいと食事を楽しませてもらおう。
いつもみたいにクルビスさんと食べさせ合うのは、さすがに同僚の前では抵抗あったしね。
「さあ!こっちも準備OKですぅ!行きましょう!」
キャサリンさんも準備万端だ。
カイザーさんがカギを閉めて、戸締りは完了。
「楽しみですねえ。今日は外から来た珍しい果物もあるそうですよ。」
「それは楽しみですね。守備隊のメニューを食べられるなんて…。兄に羨ましがられます。」
カイザーさんもデリアさんもウキウキしてる。
そういえば、守備隊の料理って人気あるんだよね。
守備隊の食堂は昼の空いた時間に一般に開放されてるけど、新しく開発されたメニューや食材目当てのお客さんで一杯らしい。
私の餡子はかき氷と共に飛ぶように売れてるそうだ。作り置きがきくから楽だとルドさんに喜ばれたなあ。
クルビスさんにいつもの1日の報告をしながら、皆の浮かれた様子に私もウキウキしていた。
ふふふ。どんな果物なんだろうなあ。きっと色はすごいだろうけど。真っ青な果物、とかかな?
「ああ。そういえば、長さまも来られるとおっしゃってたから、顔を会わすことがあるかもしれない。」
メルバさんが?珍しい。
最近忙しくしてるみたいで、しばらく顔を見てなかったのに。
「果物づくしだからな。長老方も来てるかもしれない。」
そういえば、エルフってお肉が苦手で野菜や果物が好きなんだっけ。
それでも、長老さん達まで来てるって、どんだけ果物好きなの。